教員と児童生徒が手をつないで歩いたり、教員の後をついていったりするのは、よくある光景です。
移動や歩行について、指導目標に則ってやっており、主体的な移動への段階付けだと言いたいところですが、とにかく、もれなく学習の流れに乗ってもらわないと、遊出(ゆうしゅつ)しないように、転倒しないように、という教員側のニーズからくるものも多いと思います。
理由は様々でしょうが、やはり、「何で支援が必要なのか、何で独歩でないのか」という理由付けは必要だと思いますし、単に一人で歩くだけでなく、学校や日常生活場面において、なぜ独歩を認めているのか、なぜ独歩を認めていないのか、も整理する必要があると思います。
【学校という環境で独歩するには】
「はえば立て、立てや歩めの親心」などといいますが、教員もまた、自分が手をかけて児童生徒ができるようになったのを保護者に見せたい、などと頑張ることがありますし、それをやりがいに感じているところがあると思います。ただ、「功を焦るな」と言いたいところです。
立位・歩行の質を考えるだけでなく、それをすることでどんなリスクが想定できるか、も大事です。何パーセントなどと統計はとれないですが、5回安全に行けたから、もう大丈夫というのではなく、客観的に見て、妥当かどうか判断しなければなりません。
それには、児童生徒自身の運動や認知機能だけでなく、学校という環境が移動について、どのような環境で、どのような影響を与えるのか把握することが必要だと思います。
【環境と影響】
①大きい箱
大勢の児童生徒が出入りする場所なので、校舎内は複雑です。履物が違う、入っていい場所といけない場所がある、だけではありません。フロアごとに同じような造りなので、何階にいるのか、階のどこにいるのか分からなくなることがあります。このあたりは、高層の病棟がある病院と同じような話だと思いますし、フロアごとに色を変えるなどの工夫もされることがありますが、迷ってしまったら、頼りになるかどうか怪しいところです。
②導線が入り乱れる
手すりを伝う、廊下に引かれた色のテープをたどるなどができればいいですが、学校では導線が入り乱れるので、床に線をひくことは、あまりないのではと思います。ただ、行き交う人同士でぶつからないように、右側通行などのルールを設定することがありますが、これもまた移動するうちに分からなくなることがあります。
また、分岐点が多いので、見知らぬゾーンに入ってしまうと、戻れなくなることもあります。
更にですが、多くの児童生徒が往来するので、まきこまれたり、ぶつかったりする危険性もありますし、どこかの集団の後を何気なしについていって、他学部のところに行ってしまうかもしれません。
③階段とエレベーター
何となく不安になって、目の前に出てきた階段に惹かれてしまうこともあります。階段を上がったり、下りたりするうちに、訳が分からなくなる、転落してしまうかもしれません。
また、エレベーターが大好きな児童生徒だと、他人が降りたあとのエレベーターに飛び込んで、他のフロアに行ったり、閉じ込められたりするかもしれません。
④意外と刺激が多い
校内はシンプルな構造になっていて、比較的刺激になるもの(目移りしそうなもの)が少なそうですが、そうでもないかもしれません。刺激があると、見聞きしたものを頼りに現在位置を把握したり、進行方向を決めたりすることができるかもしれません。しかし、刺激があるが故に、よそ見をしたり、注意があちこちにいって壁などにぶつかったりするかもしれません。
ゴミ箱や掲示物、消毒スタンド、椅子など、挙げ始めたらキリがありません。
【できそうですか?】
上記のことをふまえ、児童生徒一人で、校内での移動はできそうですか?
目標が分かる、導線が分かる、接触しないよう予見して、接触しても倒れない、杖を蹴とばされても転倒しない、どうでしょうか?考えてみると、比較的守られているであろう学校であっても、結構ハードルが多いと感じられるのではないでしょうか。