学校の文化 担任の先生より

209)楽しいやりとりは、生きるために必要なコミュニケーション手段と一致するか

こんばんは、雑賀孫市です。 先回の、208)シングルタスク(1つずつ)が主な生徒に対する指導についてですが、こんなやりとりがあったなぁ…などと思いだしたので、補足で書いてみます。 含蓄はないですが、教室で聞かれる生の声って、校外にいる方にとっては新鮮に思えるかもしれません。

【今回のお話】
①数学の時間はクイズ番組?
②調理の時間で味わった最大の挫折
③言いくるめられずに反対意見を述べた

【①数学の時間はクイズ番組?】
中学部1年生が始まって、すぐの頃です。

先生A:「この、5たす3は?」
生徒 :「6!」
先生A:「あぁ、それではないなぁ」
生徒 :「あぁ~(残念そうなリアクションで)」

私はこのやりとりをみて、どこかで見たクイズ番組のようだと感じました。
また、この生徒が間髪入れずに挙手をして、即答しているところに疑問を感じました。


そこで、私は後ろから言葉をかけました。
私  :「ねぇ、さっきの問題、自分で考えてから答えた?」
生徒 :「(きまずそうに)いいえ。」
私  :「間違ってもいいから、〇〇君が考えて出した答えを聞きたいんだけど、できるかな?」
生徒 :「はい」
それ以後、この生徒は授業中の発問に対して、ノリで答えることはなくなり、 考えてから答える、「分かりません」と答えることができるようになりました。 数学の時間はネタや受け答えのタイミングをはかる時間ではありません。

それでいいんだよ

【②調理の時間で味わった最大の挫折】
決められたことは順序よく(シングルタスク)でき、お家の手伝いもよくしているとのこと。
その腕を披露したいということで、生活単元学習でホットケーキを作ってあげよう、ということになりました。

私:「ねぇ、ホットケーキって、一人で作るとか、やったことあるかな?」
生徒:「一人ではないですけど、お父さんと一緒に何回も作っているから大丈夫です。」

調理当日、先生Aから大目玉。
「分量を量らずに、いきなり材料を次々ボールの中に入れるなんて!」
「こんな、いい加減な調理は見たことがない!」
それを聞いた生徒は大泣きしました。

この授業での教員Aの対応の是非について、学部内で意見が分かれていました。 その中で、私は内心「今まで大人の手を当然のように借りて、それで自分一人でできていた、と思っていたことに初めて気が付いたのか。」と思っていました。
その後、生徒は自宅で猛練習をして、授業でも少し手伝ってもらいながら、ホットケーキを完成させました。
この時は特に「自立」って言葉は難しいと感じました。

できたー

【③言いくるめられずに反対意見を述べた】
生徒は教員たちと新聞やテレビのニュースの話をするのが大好きでした。
自宅でテレビを観て、それを見て行ったお父さんの言葉を覚えて、学校で披露するのです。

教員B:「~地震って、大変だったねー。」
生徒 :「あれは、〇〇大陸のところから…。」
教員B:「へぇ、そんなところまで知っているんだ、すごいねぇ。」
生徒 :「(満足顔)」

とにかく、相手が期待するであろう言葉を考えて答えてきた生徒。
そんな中、無理難題な課題を生徒に投げかけてきた教員C。
それに対して、生徒が出した言葉は「〇〇君に迷惑がかかるし、僕にはできません。」

影で聞いていて、涙が出るほどではありませんでしたが、嬉しかったことを覚えています。

https://magomago1.org/letsthinkandmoveyourselfaregood202009/
前回のブログ「208)シングルタスク(1つずつ)が主な生徒に対する指導について」でした。

https://magomago1.org/210howdoyouseeaboutoneyear202009/
次回は、「210)時間の流れ(1年ごと)を感じられるようにする学習(工夫)。」です。