担任の先生より 未分類

583)特別支援学校 企業との連携(食品サンプルを手に入れた)

先日、レストラン街を歩いていたら、店の裏手のゴミ箱の脇に小さな木の箱があるのを見て、ふと覗き込んでみると、パンだのパスタだの、いくつかの食品サンプル(食品ダミー)が放置されていました。食品ダミーとは、レストランの入り口にあるお料理の模型です。おそらく、ゴミ置き場にあったものは、見せるには古くなったか、メニューが変わって用済みになったものか、のいずれかだと思われました。

話はそれますが、日本にある飲み物の自動販売機に入っているものもダミーといいます。プラスチックの缶の枠に、ぺらぺらのシートをはめ込んで缶に見立てています。私が仕事でさわっていたころは、もう引退してしまいましたが、ドジャース(野球)の野茂英雄さんのラベルの野茂缶が出回っていました。深みのあるブルーが基本色で、割とよく売れていたと記憶しています。

話は戻り、食品サンプルを見て、「欲しい」と思いました。

子どもに食べ物を見せるとき、イラストや写真を見せるのですが、実物の力は偉大です。
しかし、授業の度に実物を用意する訳にはいきません。(手間と予算と食品衛生の問題で)
食品サンプルがあれば、1つ提示のバリエーションが増えるでしょう。

ちなみに、子どもにとって分かりやすいのは、実物から始まって写真カード、イラストカード…文字と言われています。確かに、かかれているものは「これ」と認識するための分かりやすさとしては妥当ですが、私は別の観点をもっていて、必ずしもそのルールに従う訳ではありません。それは何かというと…。

例えば写真の場合

①リアルさがあるので「食べますか?」の提示と捉えるかもしれない。
②色鮮やかなので、見せたいのは1つの料理か、含まれる食材か、色かかえって迷わせないか。
③同じ料理でも、この八宝菜はパイナップルが入っているので認めない!など細かい描写が選択基準に影響することがある
このような可能性を考えます。

よく、教材の提示の方法として、いろいろなテクニックが情報として出回っていますが、個別の認知特性や生活経験の違いで、そのテクニックが通用しない場合があります。テクニックを使いつつ、個別の特性に応じて「させたい学びが達成できるか」検討することが大事かと思います。

よく、「この子は三択ができるので、これもできます。」と決めてしまっている場合がありますが、そこは見て、比べ、決めて、示すといったプロセスをふむ能力があるのではなく、単にポケモンのキャラクターである「ピチュウ、プラスル、マイナン」のうち、好きなピチュウが目についたからそれに飛びついただけ、かもしれない、などと考えます。

【もらえるか確認する】
話は戻って、私はお店に入り、店員さんに「裏に食品サンプルがあって、どうも廃棄するようなのですが、あれを教材として使いたいです。頂くことはできるでしょうか?」と聞きました。

おそらく廃棄だと思われますが、そのレストランのブランドのロゴが入っているので簡単にはいかないかもと思っていました。店員さんは社員さんに確認し、社員さんも会社から支給されているものなので判断できかねる様子でした。普段なら、「そうですか」と引き下がるのですが、ここは結論がでるまで頑張ってみようと思い、「もしできたら会社のほうに問い合わせていただけたら嬉しいです。」と伝えて、メールアドレス(個人のフリーメール)と、氏名と所属を伝えて、退出しました。

後日、そのレストランの会社から連絡がありました。「各店舗に渡しているものは、販促用で役目を終えたら廃棄することが決まっていて、それは曲げられません。しかし、店舗に配る前の試作品はその限りではないですし、メニューの選択はできませんが、それでもよろしいでしょうか?」とのことでした。

私としては、「食べ物、料理」を子どもに示すことを目的としている訳ですから、メニューにこだわりはありません。なので、改めてお店にあるものを見て欲しいと思ったこと、これを使って子どもに選ぶことや外で食事をするときの期待感をもたせることについて学ばせたい、種類はどのようなものでも頂ければ嬉しいです、と書いて、学校の所在と所属、氏名を書いて返信しました。

【到着】
1週間くらいして、学校に一抱えの段ボール箱が1個届きました。
開封すると、お肉料理とパンなどのサンプルが5点くらい入っていました。
私はそれを確認し、サンプルを送ってくれた方に、お礼のメールを出しました。
「有効に使わせて頂いて、子どもに食べること、選ぶことの楽しさを教えていきます。」と。

この時のお願いは、結構図々しいものだったと思いますが、食品サンプルを使った授業をしたらどうなるだろう?という好奇心が勝っていたと思います。会社は物を売って利益を得ている、といえばそれまでですが、地域社会への貢献、文化の発展などの企業理念も持ち併せています。それらに合致する提案ができ、受け取ったものをどのように活かしたいか伝えることでwin-winや好意的につながる関係を作ることができたと思っています。

【先日行った授業にて】
工作で食べ物をつくる授業の後、子どもたちにこのサンプルを見せ、触ってもらいました。そうして、その時の子どもたちには「みんなうまくつくれたね」、「でも、大人はもっとすごいものを作るんだよ。」「みんなも、もっとすごいものが作れるように、勉強していきましょう」と言って締めました。

可能性があるなら頑張らせます。
それは、大人も子どもも同じです。現状に満足しつつ、まだ先があることを食品サンプルを使って示すことができました。