担任の先生より

772)特別支援学校 否定語で指導しないということ

先日、立花隆司さんが書かれた、「一流の指導力 日米プロ野球で実践した『潜在力』の引き出し方(ソフトバンク新書、2012)」のなかで、ポジティブな指示で潜在力を引き出すことについて書かれていました。

「監督は『高めに手を出すな』ではなく『低めを狙っていこう』と指示を出すべきなのです」と述べ、「〇〇してはダメ」というネガティブな言い方をしたときと比べて、「〇〇しよう」というポジティブな指示を出したとき」のほうが成績が良くなったと書いていました。

【特別支援学校におけるポジティブな指示】
「~してはいけません」ではなく、「~しましょう」という指示をしましょうという指導が良い指導だとして、数年前に現場で推奨されていました。

この指導は、何をすることが望ましいのか、具体的な指示になります。分かりやすいし、何に向かえばいいか明確だからです。もし、「~してはいけない」だと、「じゃあ、どうすんねん」となり、よく分からないから好きなようにすればいいと、開き直ってしまうことが増えると思いました。

しかし、特別支援学校内でポジティブな指示をしても、多くのケースでうまくいっていないと感じています。よくあるのが、廊下を走る子を制するときです。「歩きましょう」と教員が伝えても、聞く耳をもたず走り去ってしまいます。教員の声は届いていないのか、耳に入っていないのか、とにかく効果がありません。

【なぜ、指示が入らないのか】
「走る」
そう決めた状態から切り替わらないということです。
臨機応変さがない
一度決めたら変えられない
頑固
こだわりがある
感覚刺激を好む

こんなキーワードがあてはまる児童生徒だと、止まらないんだろうなと思います。走る子供が歩くとき、まずは走るという指令をストップさせること、歩くという動作はどんなものかイメージして、歩くという動作にシフトを変える、になると思います。

止まれない子は、明らかに走るという指令が抑制(または停止)できていません。

どちらかというと、「歩きましょう」は三段階、「止まる」は一段階なので、シンプルな指示は「止まる(否定的」になります。動機づけがもてる状態の子であれば、ポジティブな指示が正解かもしれません。そうでなければ必ずしもポジティブな指示が適切だとは言えないのではないかというのが持論です。

【効き目のある一撃】
快刺激のある空想の状態から抜けていない子が、一言で戻ってきた事例があります。これは、普段から「これは聞かないとマズい」言葉がパターンとして刻まれていたと思われます。

それは、「残念なお知らせ」という言葉でした。

具体性のない、得体のしれない不安をかりたてる言葉の威力は絶大です。

「これを無視すると、自分にとって不利益なことがある」と分かっている子に有効でした。とはいえ、誰にでも有効なものでないと思うので、特効薬を見つけるか、じわじわ効いてくるような指導を計画的に行うしかないのかなと思います。