小学1年生の指導は難しい、という話です。
【1から学ぶ】
小学1年生にすることは、初めての学校生活ということで、時間割に沿って行動することを肌で感じてもらう、1からなので、基礎基本から段階を追って学習する、といったことと考えていました。
1から学ぶということは、フィリピンからミャンマーなどから日本に来ている外国の方向けに日本語を教えるときみたいに、基本的な概念形成や単語の理解、既存の知識や文化を基準として日本がどう違うのか把握してもらうのと似ていると思っていました。
【ファーストペンギンの難しさ】
これまでやってきた教員としての営みは、経験してきたことを活かして、新しいことを取り入れる、深みや広がりのある教養を身につけてもらうなどが中心でした。それは、ちょうど仏像を彫るのと同じで、大枠を形づくり、なんとなくここが顔で、腕で…と見て分かる状態から彫りすすむのと同じです。
なんとなく方向性が決まっていれば、「ここは仏像の鼻だ」、では、この鼻を高くするか、低くするか、丸くするか、細くするか決めることができます。
しかし
ファーストペンギンになる新1年生の担任はそうはいきません。まったく動かない訳ではないし、それなりに就学前や家庭生活の色がついているので、浅く、狭く色づいた彼らを、どのように意味づけて、価値づけていくか、決めることがとても難しいです。(決めてしまえば、なんとかなるのですが…)
【1年生、たとえば】
たとえば、教員の隙をついて、教室から飛び出す子どもがいたとします(よくあるパターン)。
どう捉えるでしょうか?
・素早く走ることができるのね(運動機能評価のみ)
・自分の課題に向き合わずに放棄した
・教員の関心をひこうとしている、または試している
・この子を追いかけたら、他の子をみる目がなくなるので困る
・周囲と大人の状況をして判断できる
・一直線に教室を出て、廊下にでたので、自分で安全管理する能力がない
どれも正解です。
では、それをふまえて、実際にどうするでしょうか。
方法①「追いかけてつかまえる」
〇:その子の安全を確保できます。学級内の安全を守ることにつながります。
×:その他の子供がよりどころを無くして続いて教室を走りまわるようになった、その隙に小物を口に入れて飲み込んでしまった、など。また、逃げると教員が自分のところにきてくれると問題行動を強化してしまうことも想定できます。
方法②「逃げる行動を強化するので、追わない」
〇:逃げても大人の関心をひかないので問題行動が強化されない、大人が反応するのは学習上の行動や努力によってもたらされることを示すことにつながります。逃げた子以外の子供の指導を安定的に継続できる。
×:廊下にでて、更に注意をひくために隠れたり、掲示物を破損したりするかもしれません。他の子供にぶつかってケガをさせる、他の教室にとびこんで他の学級を混乱させることも考えられます。
どれも〇と×はありますが、多くの教員は方法①を選ぶと思います。しかし、新入生でなく、在校生だったとしたら、子供によっては方法②を選ぶこともあります。
期待する教員の反応がなければ諦める、飛び出して1人になったら不安なので戻ってくる、勝手なことをしたら、その後無視されるので無茶しない、などです。積み重なった実態把握と指導の積み重ねによって判断できることです。
しかし、新1年生には、何を考えてそうしたのか、どう対応するのがベターなのか、基準や指針はありません。ファーストペンギンは、いろんな意味で難しく、勇気が要るのです。