担任の先生より

947)特別支援学校 高圧的な先輩に悩む若手教員

東京都は、令和5年度の新規採用教員のうち1年以内に離職した教員の割合が4.9%に上ったことを発表しています。採用されたのが3472人で、そのうち169人が退職したとのこと。

これを受けてでしょうか、新人教員の離職に悩む東京都教育委員会が、学校現場のコミュニケーションを改善しようと、採用から3年目までの教員を対象にした大規模アンケートを実施したとのことです。

ヤフーニュースに記事がでていました。

【尊敬できない先輩や上司はどのような人だと思いますか?】
先輩や上司について、6つの選択肢のうち、3つまで選択するとのことで、質問の全容は明らかではありませんが、最も多かったものについて列挙されていました。「後輩・部下を指導するときに感情的(高圧的)になる」、「人によって態度を変える」、「相談しづらい雰囲気を常に出している」があり、あと3つの選択肢があったということになります。

自由記述では、「今忙しいので(話しかけないでください)という言葉を言われたときは、傷ついた。いつでも相談しに来てくださいと言っていた人に言われたので、しんどかった」、「生徒のいる前での叱責(しっせき)や、感情的な発言による指導を受けたことがあります」、「指示がほとんどなく、分からないなりに正しいと思う方法で…(中略)、やり方が違うと注意され、最初からやり直した」などが紹介されていました。

【このアンケートから感じたこと二つ】
何も考えずに、結果のみをみたら、学校のOJTはうまく機能しておらず、新人の教員が仕事をしにくいのは先輩や上司の対応が悪いからだ、ということになるのでしょう。

感じたことのひとつめは、新人教員の仕事のしにくさについて、幅広く分析できるものでなく、選択肢によって範囲を限定していないかということです。アンケートの結果が、「ありき」で作られているように思われます。新人教員の離職の原因が何なのか、もっと幅広く仮説をたてないと、本当の原因を語れないでしょう。

ふたつめは、OJTが機能しない理由について、ターゲットになっている先輩や上司の意見も聞くべきだ、ということです。本当に、新人を育てる力量のない人たちなのか、人格的に問題があるのか、読み取ることが必要でしょう。

【教員の仕事】
教員の仕事の構成について、いろいろな分け方があると思いますが、以下のような見方もあると思います。

  • この時はこんな文書をつくれ、こんなときはこの観点や書式を守れ、このときはこんな手続きを踏め、など、「仕事と、それに関する型が明確に示されている仕事」です。これは決まったことをするのであって、そこに意味や価値があるのか、合理的かそうでないか検討や改善を図るものではありません。新人の教員のなかには、そのものの意味がなく、もっとよくしたいと思うものもあるでしょう。しかし、それは組織の決定事項への反発や混乱を招く行為として、指導や批判の対象になります。
  • 「適切に実施する」、「~といったことがないように」のような、具体的なものはないけれど、後で指摘されないように取り組めというものです。この類の仕事は、過大な配慮や予見性を必要として、見えない不安にかられて仕事が増やされていく傾向があります。対応や方法は学校ごとに扱い方が異なり、中にはそもそもの理由が分からない、何に起因するものか分からなくなったものも散見されます。
  • あとは、職場の誰かが作り出した伝統的な仕事があります。この伝統的で、独自性のある仕事は、誰が最初に旗を振ったのか分からず、中には声の大きい保護者対応でできたものだろうと思われるものもあります。これも、良かれと思って始めたものなので、廃止や縮小させるきっかけがなく、②と同様、波及や膨張する可能性があります。

おそらく、先輩や上司は、このような仕事の数々を、責任をもって完結させることに追われています。分かる人が率先して進めていかないとまわらないことを知っています。そうなると、仕事ごとにマニュアルを作る余裕がなく、新人に向けて1から教えるくらいなら、自分がやったほうが早いと感じることもあります。

「仕事の流れを提示した、役割分担をした、あとはそれぞれで進めてくれ」についても限度問題がありますね。見たら分かるものはいいのですが、手続きが煩雑、複雑なものは言われてポンとできるものではありません。こういうのは、新人や異動してきたばかりの人に投げるのは無理があると思います。このへんの見通しのなさと、丸投げ感のあるところが、今の新人教員にとって辛いところなんだろうな、と思います。