卒業証書授与式(いわゆる卒業式)のために、卒業生は1か月半ほど前から練習を始めます。
そりゃ、一回伝えれば、それを理解してすぐできるような子どもばかりなら、2週間前から授与式が行われる体育館や講堂と、各教室のダブルで練習すれば間に合うでしょう。しかし、私がかつていた学年はなかなかの粒ぞろいで、4か月前から練習していました。
そこで問題視されたのが、一定の経路を正しくあるく、列になって歩いていく、でした。本番はもっと難しいです。卒業生入場とかだと、一人ひとり一定間隔をあけて卒業生の席まで移動します。あの、カノンみたいな曲が流れる中で、バタバタ走らず、横道にそれず、フロアに寝転んだりせずに、です。
【よく使う教材】
そんななか、よく使う教材が「ケンステップ」などの位置を示すものです。
体育館の舞台にあたるところの、どこで待機し、どこで一言申して、どこまであるいて一礼するか、など、所作ごとの区切りが把握できるようにします。
点だけで分からなければ、止まるところは「赤」、一礼するところは「黄」などの違いを出す、なんてこともありました。
【リアル】
あと、証書のもらい方も指導します。面白いのかどうなのか、学校や学部ごとに少しずつ継承されたやり方が違うのです。
一礼して、左足から一歩前にでて立ち止まる、証書が出されたら右手から順に手を出して受け取る、みたいなやつです。これも、正式なやり方はあるのでしょうが、普段から右と左の区別が難しいなかで、卒業式だからこうやって!は厳しいなと思うこともあり、私が仕切ったときは、全部「右」から始める、というルールにしたことがあります。
証書も、ただの紙を使うと、もらってからどう抱えるか分かりにくかろうと、現物に近いものを作ったことがあります。
段ボール紙を準備し、背表紙には紺色の色紙を貼り付け、その上からブッカー(防水的なシール)を貼る。見開きには証書の失敗作を貼り付けて、それらしい雰囲気をもって練習できるようにしました。これを10セットくらいつくれば、卒業式練習の度に使えます。
シンプルに見せるのが式ですが、その裏には様々な調整や練習などがあるのです。