学校の文化 担任の先生より OT・PT・ST

95) 2007年特別支援教育制度本格実施を受けて、OTはどう反応したか② ステージ1

こんにちは、雑賀孫市です。
これから、作業療法と特別支援教育とのかかわりのなかで、大きなターニングポイントになった 2007年について書いていこうと思っています。

三輪書店の作業療法ジャーナル2007年4月号には、特集「特別支援教育の今」と書かれていて、その中に土田玲子先生「子どもたちの学校生活支援~学校教育における作業療法士の役割~」というタイトルで、それまで学校教育と深くかかわって得た知見について書いています。(以下、抜粋) (意味づけや価値づけは、読んでおられる方それぞれでお願いします。)

【作業療法(OT)の特性の再確認と再構築】
特質1:支援できる対象の幅の広さ
特質2:周りのひとや環境を操作するケースワーク技術やコンサルテーション技術
特質3:多分野間の橋渡しの役割や「通訳」の役割「交通整理」の役割を担うこともできる
特質4:ひとが意味ある活動に従事できるように支援する。

私も、やっと特質1から特質4までを、それなりにこなせるようになってきました。それは客観的に学校という組織を見つめながらでなく、学校に入って、学校の文化や見えないルールにもまれながら、「どうやって妥当な教育を行うか」考え続けてきた経験的なものからきていると思います。教師の長所・短所、コンサルテーションを行うOTの長所・短所、どちらも理解できるようになってきました。

【互いの仕事や文化の理解から始めよう】
ステージ1(学校もOTもお互いの役割や機能をあまり理解できていない段階)

助言や要求は相手の立場や力を見極めて行わなければならない。子どもや保護者の代弁者としての役割ばかりに注意が向き、それが学校にとっての過度の「要求」にならないように注意しなければならない。」

「今までの学校文化では、学習指導要領に象徴されるように、子どもの特性とは関係なくプログラムと目標が一律に決められ、教師はその目標を達成すべく集団一斉指導型の教育のしかたをトレーニングされている。そこには臨機応変さや、個々のケースに応じた異なった対応という文化が育ちにくい。子どもの方もそのような文化で育てられるため、個別の支援や他児と異なる対応に抵抗を感じる者もいる。」

「学校文化の特性として、組織として動くことが多いため、教育手法がマニュアル化しやすい点があげられる。マニュアル化のメリットは、個々の教師の能力の差にあまり影響されず、特定の指導法を大きな組織で徹底できることである。しかし、デメリットとして、個々の教師の判断力を育まないためパターナリズムに陥りやすく、個々の子どもに応じた柔軟な取組みが展開しにくくなる点がある。」

学校の文化とOTのかかわり

学校(特別支援学校)にいる立場上、ここは少し意見を述べねばと思います。

学校の先生の指導は画一的で、子どもの発達や個性を侵害している、といった批判がよく聞かれます。私も学校にくるまでは、そう思っていましたし、医学的な視点を学校に持ち込みたいと思っていました。

画一的ととるか、共有できるツールととるか

が、学校に入り、同じ立場で考えようと担任の経験も積みました。
そこで分かったことは以下の通りです。

①教育課程の縛りが思った以上に強かった。(時間割や授業時数、計画通りに実施する、等) ②教員組織は異動と校内調整で戦力が安定せず、強いコマが揃った学年にはチームには即戦力でない先生が配置されることがあります。 (数的には1ですが、計算しにくいところです)
③教員と児童・生徒の比率の関係で、個別に配慮できても、個別指導はなかなか難しい。
④パターン化しないと教師も子どもも見通しがもてず、ない。準備に膨大な時間がかかるのは困る。

⑤力がある先生と評価されると、俗にいう「大変なクラス」にまわされ、チームをリードする機会が奪われる。(身動きがとれなくなる)

⑥授業や動き方、教員体制がよく入れかわるので、「その時にできること・できないこと」も変わる。 いつ、どんなことを、誰に行うかは、担任の力量と裁量と学級経営方針に委ねられる。臨機応変さが得意でない先生が個をクローズアップすると、学級にいる他の児童生徒が置き去りになる可能性が非常に高い。

⑦個に応じた指導が選べません。学校にもよると思いますが、集団としてまとめ、動かすことに必死になっていることがあります。OTの私もそこに巻き込まれ、OTの特性はそこに使われてしまいます。従来のOTの専門性で集団をリードするのではなく、営みの中で留意点やアクセントとして使うようにしないと学級や学年経営が維持できません。

できる授業実践(もっと大がかりになると…)

⑧綿密に打ち合わせされ、環境的に優れた授業実践は、学校で行われる「研究」の一環でなければ作り上げることが難しく、そこで費やした労力と時間、授業(数)は他の授業へのシワ寄せになっています。 創造力あふれる実践ができたと発表しても、それを継続するための「ヒト・モノ・カネ」は投入されません。

(ステージ2 は次回に続きます)

http://magomago1.org/2007specialeducationstartsnonaka202004/
前回は、「94)2007年特別支援教育制度本格実施を受けて、OTはどう反応したか①」でした。

http://magomago1.org/supportteacherstage2202004/
次は、「96)2007年特別支援教育制度本格実施を受けて、OTはどう反応したか③ ステージ2」です。