学校の文化 担任の先生より

343)特別支援学校 落ち着く部屋(カームダウン室)

2021年2月4日付の朝日新聞デジタルで「福岡市立の特別支援学校が、廊下に生徒を入れるための小部屋を段ボールで作っていたことが市教委などへの取材でわかった。中学部に通っていた男子生徒は自分の意思に反してこの小部屋に入れられたとして不登校になったという。生徒の母親は人権侵害だとして近く福岡県弁護士会に人権救済を申し立てる。」という記事がでていました。

また、これについて「市教委発達教育センターは朝日新聞の取材に、生徒が転校してきた前後に小部屋を置いたと認めた上で小部屋は気持ちを落ち着かせる場所だが、この生徒専用ではない。この生徒が小部屋を使ったこともなかった」と説明していたそうです。

【カームダウン室とは】
カームダウン室は知的障害特別支援学校によく見られます。

視覚や聴覚などの感覚や、同じ空間を共有し続けることに負担感を感じてイライラしたり、疲れてしまったりする生徒が一時的に「刺激の少ない空間で自分を落ち着かせる場所」として利用する小部屋です。

学校を建築するときに、あらかじめ想定して作られている場合もありますが、そうでない場合もあります。カームダウン室がそこにない場合、カームダウン室を利用する児童生徒が複数いた場合はどうするか、ですが「ニードがあるので合理的配慮のために、作ってください」と言っても聞き届けられることはまずありません。教員になんとか工夫してくださいと却下されるのが通常です。

そのため、教員は段ボールをかきあつめて小部屋を作る、小さいテントをカームダウン室として利用する(教員の自腹で準備されることも)、などで対応します。

【カームダウン室の利用の判断】
人権への配慮まで考え、総じて保護者に許諾を得ているかといえば微妙です。
どちらかというとネガティブな情報をあえて保護者に言わないこともありますし、学級経営上の配慮といえばそれまでです。

1つ言えることは、担任は基本的に学級経営を任されていると自覚し、学びの場に児童生徒を連れて行かなければと考えるのが通常です。それを曲げて、1人カームダウン室で過ごしてもらおうとするならば、ある程度の根拠や理由があってのことだと思われます。

【カームダウン室を利用しなかったら】
カームダウン室を利用して、効果があるとされる児童生徒について、「もし、カームダウン室を利用しなかったら」ですが、イライラがつのって自傷や他害、破壊行為、暴言、遊出などがあります。そこまでいったら学級経営は一時的であれ困難になるので、担任はそれについて配慮しようとするはずです。ここでカームダウン室の利用が人権問題であると前例がでてしまったら、そこに余程の不適切さがない限り、その自治体では利用しにくくなるでしょう。

代替手段を準備できるのでしょうか?

【カームダウン室にありがちな付属品】
・タイマー:いつになったら〇〇があるので、でてきてね
・毛布:肌ざわりのいい毛布などにくるまります
・好きな人形
などがあります。

落ち着ける空間を保証しながら、そこに依存せず、カームダウン室から離脱できるか考えます。聴覚過敏の場合はイヤーマフ(ヘッドホンみたいな音量を調節するもの)の利用や、全体の音量を下げる配慮などでしょうか。

【本件について】
特別支援学校で行われていることは人権侵害か?
これを機会に特別支援学校で行われていることや、教員の仕事について知る機会になればと思います。そうして、一般的な当たり前の感覚が、特別な支援を必要とする人の生活圏を脅かすこともある、という気づきになればとも思っています。


https://magomago1.org/342teacherslunchgoescoldandhard202102/
前回は「342)特別支援学校 冷めてしまう給食」でした。