学校の文化 担任の先生より

434)特別支援学校 だって、お母さんと連絡しているんですよ!

特別支援学校の下校時間、校門にいた教員が校内に入ってきて言いました。
「〇〇コースに乗る予定の〇〇さん、バスに乗るんですか?」

多くの特別支援学校では、登下校の負担を軽減するため、卒後の公共交通機関の利用を見据えたキャリア教育として、スクールバスを利用しています。そうして、コースごと、登下校ごとに乗車する・しないの確認表でチェックしながら乗せ忘れ、下ろし忘れがないようにしています。

【どこにいる?】
〇〇さん、さっき見たけれど…。
見渡すと、保健室の中で担任の先生と一緒に何かをしています。
どうやら、下校時間前から体調不良か何かで、対応しているようです。

【担任がなすべきこと】
スクールバスは他の児童生徒が利用していること、出発した先には保護者やお迎え代理人(親族、放課後デイ、学童など)がバス停で待っているのですから、時間通りに出発する必要があります。

そのため、個人の都合で全体を停滞させる訳にはいかず、乗らないのであれば出発するので乗らないことをバスに伝える必要があります。乗るのであれば時間通りに出発できるよう、児童生徒を時間内にバスに乗せる必要があります。

しかし、今回は、どうも簡単にはいかないようです。

【担任のジレンマ】
①どこまで子どもを見守るか
担任は児童生徒の指導だけでなく、健康や安全に配慮することが求められています。見守ることも責任、安全を確認して引き渡すことも責任です。さて、どうしたらいいでしょう。

②保護者に事後対応を引き継げるか
今回は、保護者に電話をかけて、出なかったということになっています。ということは、バスに乗せるか、学校にとどまって保護者の迎えを待つか、ゴーサインを出す根拠が担任にはないということになります。

もし、バスに乗せて、車内で状態が悪化したら、軽率な判断だったと非難されるでしょう。

実はそれほどたいした症状ではなく、バス停で保護者が待っているのに学校にとどめ置いたとしたら、保護者はバス停から学校お迎えモードに切りかえる必要がある。(電話に出なかったのは保護者の過失だが、余計な手間と時間をかけさせたとクレームが出たら、担任は謝罪しなければならないかも)

③スクールバスへの連絡をどうするか
児童生徒への対応だけでなく、職員として公的な性格をもつスクールバスを独断で待たせていいのか、どこまで譲歩してもらえるか、①②があるので、判断は容易ではありません。

【担任が出した判断】
担任によって、様々な対応をしますが、今回の担任は以下のように対応しました。

「だって、子どもが調子悪くて、保護者に連絡をとっているんです!」

だから、何?と言われそうですが、①②③をふまえた処理ができず、どれをとってもリスクがあるので、自分の立場を分かってくれと訴えました。そうして、バスを出発させ、保護者と連絡がつくのを待ったのです。

周囲は、「なんだそれ?」と思いながら、担任のジレンマがあることを暗黙のうちに理解したこと、とりあえずスクールバスが発車できたので、事後処理は限定的で、全体に迷惑はかからないだろうということでおさまりました。

【私ならどうするか】
児童生徒は保健室にいます。

救急車を呼ぶまでもないことは保健室にいる看護師や養護教諭と確認できており、学校のなかで健康観察を行うために最も適した場所に誘導できているといえます(検査をしていないので、絶対的な根拠はないにしても)。

スクールバスを無理矢理とめることは、全体に迷惑をかけるのですべきではありません。ということで、ここまでは公務員として、児童生徒をみる担任としての責任は果たしていることになります。

あとは、保護者です。

まず、担任には保護者に説明しようとする意思があり、実際に電話をかけ、着歴を残しています。
非常時等をふまえ、保護者には緊急連絡先として携帯電話などの連絡先の情報を集めているので、過失は保護者にあることを確認しています。

あとは、状況と学校としてどう対応することが適切か、管理職等に情報を入れ、承諾を得ます。これはバスが発車する下校時間までに想定できることなので、冷静に対応できます。

こうしておけば、誰に対しても担任個人でなく、組織的対応の結果だと主張できます。


https://magomago1.org/433becarefulitemstockintheclassroom202106/
前回は「433)特別支援学校 子どものためなんですよ、ダメだって言うんですか!?」でした。