学校の文化 担任の先生より

41)特別支援学校で行われる授業 「生活単元学習」

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、特別支援学校で行われる生活単元学習について、紹介したいと思います。 生活単元学習は「生単(せいたん)」と呼ばれ、自由度が高いだけに、何をするか 毎年頭を悩ませる授業です。

【生活単元学習とは】
生活上の課題処理や問題解決のための一連の目的活動を組織的に経験することによって、自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習できるようにする指導の形態である。単元は、学校行事を中心としたもの、地域等の行事を中心としたもの、トピック的な出来事を中心としたものなどがある。指導計画は、単元の配列、指導内容、活動の場の設定、個別の目標、課題等について工夫して作成することが大切である。(「盲・聾・養護学校教育の基本用語辞典」明治図書より抜粋)

6つの特徴
①主体的な学習:興味関心に基づく、目当てや見通しがもてる
②総合的な学習:必要な知識・技能が習得できる、多種多様な経験ができる
③実際的な学習:実際の生活から発展する、望ましい習慣・態度が身に付く
④活動的な学習:具体的な活動がある、活動は自然な生活のまとまりである
⑤共同的な学習:共通の課題意識がもてる、人とのかかわりをもって活動できる
⑥個別的な学習:個々の発達水準に合う活動である。個々の力が発揮できる

テーマと単元名の例
・学校行事との関連⇒「楽しい遠足」、「卒業生を送る会をしよう」
・季節の生活⇒「星に願いを(七夕)」、「秋を探して楽しもう」
・生活上の課題⇒「宿泊学習に行こう」、「電車に乗って出かけよう」
・発表・表現⇒「みんなで劇をしよう」、「作品展示を開こう」
・制作・生産⇒「カレンダーを作ろう」、「野菜を育てよう」
・偶発的な事柄⇒「転入生を温かく迎えよう」、「~さんのお見舞い」

生活に還元できることは、何だろう

【生活単元学習の現状について】
実践障害児教育(2月号、2020)に記事がでていたので、それを紹介します。 ある学校数の多い地区で行われた調査によると、生活単元学習で行われた活動で多かったのは 「校外歩行」と「調理学習」だったそうで、この結果に対して、大学の先生は「これが全国の実態だったら困る。これでは子どもが送る学校生活の「めあて」も、子どもたちの学校生活にテーマをもたらす「単元化」への配慮もない。教師の都合で行う片手間の、埋め草のような活動ではないか。主体的な子どもの姿を追求したい生活単元学習の実践とは相容れない。」といたくご立腹のようでした。

【理想と現実の乖離】
活単元学習について、どう感じられたでしょうか。 子供の生活する力を高めるために設定されている授業なのに、適当にこなすなんてけしからん! そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。 なぜ現場でうまく運用されていないのだろう?何か原因があるのではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
私は教育畑でずっとやってきた人間ではないので、その辺は他人事のように評価できるかもしれません。 ちょっと思いつくまま書いてみます。

見極めが大事

【①子供のニーズの捉え方に無理はないか】
生活に見通しをもちながら、その営みに意味があることが分かる活動は大事です。 私も教育学を学んだ身なので分からなくもないですが、一つの物事を色々な角度から見て、多様なものを拾い上げる、意味づけや価値づけをしながら、目の前の子どもの営みのために伝えられる経験則はないか考えることが大事とするならば 学校にいる子供の実態を見て教育学者は言っているのか?教室で何が行われているか、観察ではなく体験したうえで言っているのか?と思います。
大枠を作ることは大事でしょう、しかし、それがうまく運用されていないとするならば、「それはなぜか」調べ、考察を述べるのが研究者としての役目ではないでしょうか。 「こうあったらいいな」、「これが必要だ」、といった理想像をトップダウンでおろしてきているだけでは、対話的な教育学の発展は望めないでしょう。

【②子供の実態とのミスマッチはないか】
経験が積み重なり、積み上がり、分かることが増える系統立った学習ができれば力はつくでしょう。 しかし、実際に目の前にいる子供たちに年間計画通りの学習を展開すると、内容が実態に合わない、積み重ねが十分でないまま終わる、といったことが起こります。なので、大枠は年間指導計画を見ているけれど、状況に合わせて変更する労力を惜しんだらいかんと思うのです。
4回やって、どんなものか分かる
5回以上やって、積み重なり始める
半年やって、形になってくる
それ以上になると、飽きて脱線が始まる

ということで、次々に展開すると理解しないままやっただけになり、やり過ぎるとプラトーがくるとともに 飽きて意欲が低下すします。 他にも、活動を制限する要因として、遊出、自傷、他害、感覚遊び、情緒不安定、こだわり、パニック、拒否、逃避、集中力がもたない、などがあるため、児童・生徒が継続して学習に取り組める環境づくりをしています。

【③授業づくりをする教員の現状を把握しているか】
授業担当者を決めるうえで、宿泊行事や日常的に行われる授業は安定感が大事なので、その学部や学年を見てきた教員が担当することが多いです。
では、生活単元学習はというと、週1~2回だし、異動してきた先生、新規採用の先生が担当することになるケースが多いようです。
新しい環境に適応すること、新しい同僚、新しい子供たちとやっていく課題に直面した新しい先生、その先生が個々の実態、集団の実態、地域の実情等をふまえて、系統だった生活単元学習の授業づくりができるか、という話です。

このような教員の多忙感、孤立感の話になると、教員同士で助け合え、連携・協力という話になるのですが、教員が個々に抱える仕事は年々多様で高度化してきています。日々の授業のことを話し合う時間はほとんどありません。
それが分かっているから、よく分からないことがあっても、他の教員に迷惑をかけずに何とか切り抜けたいとする心情が生活単元学習の「歩行」や「調理」として表れてきている、と思うのですが、どうでしょう?

https://magomago1.org/howmanystudentsinyourclass2020/
前回の授業は、「40)特別支援学校の先生と生徒の割合って、気になりませんか?」

https://magomago1.org/stockcollectorbenefit202002/
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