学校の文化

66)元作業療法士の担任より 専門的な個別指導計画のつくりかた

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、特別支援教育で作成するといわれる、個別指導計画について書いてみます。
地域や学校によっては通称「個別(こべつ)」と呼ばれることもあります。 他にも個別〇〇と呼ばれるものはあるのですが、他のものは正式名称で呼ばれ、 用語として使用頻度の高いものは略されてしている、と理解しています。

【個別指導計画とは】
はじめに、地域差があったら、ごめんなさい 個別指導計画は、生年月日など細かい個人情報を省いた 授業一覧に成績をつけるものです。 記入するのに時間が多少かかるので、前期・後期ごとの2学期制や 1学期から3学期までの3学期制をしいて、それぞれの始めに保護者に提示し、 評価と総合所見を記入した完成形を保護者に見せて成果を共有する、というのが 流れになっています。

【個別指導計画に書かれるもの】
縦軸は①授業名と、何をする時間か 横軸は「②目標」、「③指導をどんなふうにするか」、「④評価」がオーソドックスな形です。 最後に、⑤総合所見を4行前後書いて、完成です。

例えば、図画工作だと
①図画工作 「季節の絵を描こう」、「運動会の飾りをつくろう」
②季節の植物や行事を絵で表現する。作品づくりで使用する道具の使い方を覚える。
③具体物やイラスト、写真などの視覚教材を用意して、提示する。
④コラージュの作成では、好きな写真を選び、教員と一緒に糊をつけ、台紙の枠内におさまるように貼ることができた。
⑤エピソードも含め、「~することが増えました。」、「~ができました。」のような文面です。

【書く時の留意点】
・主語の扱い:②は児童生徒が主語、③は教員が主語、④は教員が見てどうだったか、になります。  都道府県によって、学校によって解釈や書き方が違うことがあります。

・独特な用語:排泄(はいせつ)は「排せつ」と記入しましょう、など医療業界にいた私には意味不明な  ルールがあり、困惑しました。

・枠内に書き、1枚におさめる:具体的に記載してください、などと言われますが、一枠80字前後におさめないといけないので、多少表現が曖昧になります。

・誰がどこを書くか:担任の先生が書くことが基本ですが、授業のリーダーの先生が書く場合もあるので、記入担当は誰か確認します。

・教科の内容を増やしすぎない:最後の総合所見を書くスペースが無くなるので、文字数に注意します。

よく考えないと、書けないなぁ

【感じていること】
①表現の曖昧さ
文章を書くにあたり、「~できる」などの表現が推奨されます。 例えば、「座って待つことができた」などのセルフコントロールに関する成果も書きたいなと思っても、ふさわしい表現でないと指摘されることがあります。 そのため、「友達が発表する間、椅子に座って最後まで聞くことができた。」などと変更します。 これだと、興味のある友達発表という刺激があるから座れたのか、聞いた内容を理解できていたと評価したのか、この子は発表などの場面設定があれば座っていられるのか、などの憶測を呼ぶことになり、このグレーさが、私が個別指導計画は参考になるけれど、使いにくいと思う一因になっています。

②計画するが、計画通りにはいかない。
個別指導計画は、「今年度、これでいきます」と宣言するものなので、年度が始まって早い時期に完成させます。では、今年度はじめて学校にきた先生(あなた)は、会ってすぐの子どもについて、計画を早々に書くことができますか?という話になります。

実際、それは難しいので、新小学部1年生以外は前年度の担任の先生等が作成して、引き継ぐことになるのですが、「実態の捉え方がちょっと…。」、「この活動はマニアックすぎて踏襲できない…。」ということもあるので、「全体的にはこうですが、新しい学年になって、先生も変わったりしているので、適宜学年の状態をみながら内容を考えていきますね。」と、人間関係重視ですすめたほうがいいと思います。

【追記】
個別指導計画は半年くらいの期間のなかで、教科ごとにこれという成果やエピソードを書きます。それだけなら、少し時間をかければできてしまうでしょう。しかし、全体的な児童生徒の実態のおさえ(基準)が妥当でないと、矛盾があったり、高すぎる目標設定に歯止めがかからなくなったりするケースがあります。

そうなると、教員も児童生徒も越えがたいハードルを前にして動けなくなったり、教員の「神の手」が発動して「できてます、できてます」が止まらなくなったりします。 そんなときは、いったん基本的なところから順番に確かめてみましょう、で場を落ち着かせればいいのです。

http://magomago1.org/makingcareplan202003/
前回のブログは、「65)介護福祉士実務者研修(介護過程Ⅲ)は考えることが多いです」でした。

http://magomago1.org/exerciseinthespecialeducation202003/
次は、「67)特別支援学校(知的)での子どもの体の使い方(運動・体育)の指導について①」です。