学校の文化

56)特別支援学校でのADLの指導(靴の着脱)について考える~作業分析は大事~

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、特別支援学校で行われる靴の履き方について書いてみます。
学校で行われるといっても、単に靴なので仰々しいことはありません。 ただ、登校してからはじめにすることなので、慌てないために おおまかな流れを知っておいたらいいと思います。

【登校までに知っておきたいこと】
靴の着脱をどうするか、の前に靴を履き替えてからどうするか、を知ることが大事です。
なぜなら、指導にあたっている児童・生徒について、そのあと誰かと一緒に教室に入るのか、 学年全員揃ってから移動するのか、学部や学年経営を考えると、「〇〇さんは大丈夫そうだから 一緒に教室まで行っちゃおうよ。」と、その場のノリで判断するのはよろしくありません。
出席する児童・生徒が、それぞれ誰の指導のもと、どのように移動するか把握して、 連れ忘れや特定の教員に過大な負担を強いていないか確認したり、複数の目が必要なときは 小集団を作ったりして、移動と安全確保が両立するよう配慮します


【靴の着脱の流れ】
児童・生徒と靴箱まできたら、たくさんの靴箱があり、ハチの巣のように 靴の収納スペースが並んでいると思います。
①所属する学年の靴置き場がどのあたりにあるか、児童・生徒が使っている靴箱がどこにあるか 把握して移動しているか見ます。 (見当識の状態が確認できます。できるなら、何をするか分かり、どこに行けばいいかあたりがつけられるということです。)

足あげて履けるんだー

②どこで履き替えるか。  
人が少なければ自分の靴箱の前で履き替えてもいいと思いますが、上履きと下履きのいれかえのために人が密集するようなら、「ちょっと離れて履いた方がいいのかな。」と配慮をすることがあります。 (周囲の状況を見て、他者の動きを見て、どうしたらいいか考えて、判断して、行動できるかといったアセスメントができます)

③どんな姿勢で履くか  
車椅子座位の場合もありますが、立位・歩行が可能な場合は立位か椅子座位か選択することになります。児童・生徒によって、片足を上げて保持することが難しい、足を上げながら手を使うことが難しい、などの身体機能的な課題と、「立ってバランスをとりながら〇〇する」といった複数の課題を同時進行ですることが難しい認知機能的な課題があったりします。

・立位か、椅子座位か判断
・立位か、椅子座位か判断、課題について練習次第で(部分的でも)できるかなという見立て
・立位や座位で靴を履くときの転倒防止策(座っていても、足をあげただけで転倒することもある) まずは、全介助に近いところから、少しずつできること、安全にできることを児童・生徒に任せていく というのが一番確実です。

④手順  
よく行っている手順が、
今履いている靴を脱いで持つ⇒次に履く靴を見て、脱いだものと入れ替える、 です。
先に、次に履く靴を出してしまうと、これから履いたらいい靴はどっちだったか分からなくなったり、脱いだ靴をどこに入れたらいいか目印がなくなり分からなったりすることがあります。

⑤どの段階でつまずくか確認してみましょう
・足を入れる(べろを踏み込んだり、紐やベルトが閉まって十分なスペースがない場合も)。
・かかとを入れる。 ・足にフィットするよう、紐やベルトを締める。

 困難さにぶつかったときに考えられる対応は、全介助(児童・生徒が教員に支援の依頼ができるかも含め)、言葉かけの支援、部分介助、です。 教育課程に沿った時間で行動すること、学年の友達を過剰に待たせないことも大事だと思うので、 やたら長い時間かかりっきりの指導にならないよう配慮することも大事です。

【追記】
前の担任の先生から「違う」だの「こうするの!」などの注文がつくこともあります。そんなときは、 前任者のやり方を基本にして、そこから自分の見立てにシフトしていけばいいと思います。 やり方を踏襲すると、その通りすればいいので楽です。しかし、自分の頭で実態を把握(できる、できない、なぜか、どうするか、どうしていくか)することを止めてしまうと、指導の根拠がつかめないので保護者に指導の説明をしたり、成績(評価)を書いたりすることが難しくなります。

https://magomago1.org/menstoiletquestion202003/
前回のブログは、「55)特別支援学校でのADL(排せつ)の指導 「立ってするのは男のプライド」か」でした。

https://magomago1.org/afterlifegraduatespecialeducationhighschool202003/
次は、「57)特別支援学校高等部の生活~進路どうする~」になります。