学校の文化 OT・PT・ST

88)真面目な専門家ほど、連携が難しくなるのはなぜ~特別支援教育と作業療法について考える~

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、特別支援教育のなかで「多職種の連携は難しい」、「その難しさはどこからきているのか?」 について、思いついたことを書いてみます。

【ふと浮かんだ疑問点】
真面目に専門職していた専門職の人ほど、連携が難しくなったりする?

なんだか、難しいな…

【職種ごとに違う価値観】
孫市は会社員、作業療法士、教員etcとやってきましたが、それぞれの職種には文化があり、職種特有の価値観があったりします。

思いつくままに書いてみると…。
・会社員は社内の役職や役割分担を価値基準にして、いかに利益を獲得するか、顧客満足や社会貢献ができるか考えます。
・公立学校教員は地方公務員法などの法律のもと、教育課程を遂行することを基本として、多種多様な専門性(専門職でない)を発揮することが求められます。(役割分担や教育観は様々)

・作業療法士はというと…定義などはあっても、活躍の仕方は職場によって色々なので、 一般向けにこれだという説明が難しいです。

解答例: 今のところ、「①ある特定の環境のなかで、②心身に関する医学的知識と評価を使い、③ベターなものを考え提供する仕事」じゃないかな?と思っています。

【Aについて掘り下げて考えてみる】
①「ある特定の環境のなか」 国によって文化は違いますし、個人によっても価値観が違います。正論だと自分のなかで思っても、実は周りは全然違う、ということがあります。そのため、大小にかかわらず対象となる集団の特性に応じた問題解決をするには、誰の問題について考えているのか明らかにする必要があります。

②「心身に関する医学的知識と評価を使い」 作業療法士は資格をとる過程で、精神医学や解剖学、運動学、生理学、評価学などを一通り勉強しています。それが物事を考えるうえでの根拠や言語化などにつながっていて、ICFをひととおり見渡せる基礎になっています。

③「ベターなものを考え提供する仕事」 さきほど書いたように、すべての人を納得させる答えを見つけることは、なかなか難しいです。 が、とにかく方向性を出さないと停滞してしまうので、集めた情報をもとに「決める」、「とにかくこれをやってみる」「いつまで待つ」などの提案をしていきます。

【真面目な専門職がハマりやすいところ】
もう一度、Aを出してみます。

「①ある特定の環境のなかで、②心身に関する医学的知識と評価を使い、③ベターなものを考え提供する仕事」

多職種連携では、検討されたことが反映される場所は、専門職が普段いる場所じゃない場合が多く、学校を支援する作業療法士はまさにそうです。普段、臨床をやっている場所と違うだけでなく、案件ごとに先生や対象の子どもが変わります。
「これから行く場所について、特定できない場所について、どんなところか知りたい」、真面目な専門家なら、そう思うでしょう。 学校の文化が分からない、先生ってどんなことを大事に考えているのだろう、この授業は何をねらってやっているのだろう?というのはよく聞く質問です。

医学的知識は、何を語るために使うか悩みます。使い方を間違えると、理詰めで相手を追い詰める言葉の暴力になります。かといって、何を基軸に話が進んでいるか見えないと、連携の場で自分の役割を果たしたいのに、もっているカードをきるか決められません。多くの人は辛くなってくると思います。
そうして、よく言うのが、「作業療法士として、何ができるんだ。」です。 臨床では、医療職全体がそれぞれの役割を果たしながら、必要に応じて連携します。その役割をどこまで果たすかが専門職の価値観だと思うのですが、連携の場では、誰もどんな役割分担があるか振り分けてくれませんし、出番の有無も決めてくれません。にもかかわらず、契約している以上、何らかの価値を提供することが求められていると真面目な専門職は焦り、不安になります。

ベターなものを考えるには、今の状態が分からないと難しいです。本当に困っているのか、改善するための余力あるのか、などの課題もあり、真面目な専門職はここでも困惑することになります。

【最後に】
全国的にリハビリテーション技士は増加してきています。しかし、小児(発達障害)分野で働くリハビリテーション技士は、その割にかなり少ないです。

特別支援教育を支援する人を養成することは急務かと思いますが、支援についた技士は誰がサポートするのかも課題になってくると思っています。 ただでさえ異なる文化があり、共通言語が見出しにくい医療と教育、人材育成を考えるうえで私のような混合種をつくることも検討しないと、この先しんどいかもー、と先日のTwitterのつぶやきにレスしながら考えていました。

http://magomago1.org/amanwhoserightforearmhadgone202003/
前回は、「87)職場で会った得意先のおじさん ~作業療法への誘い~」でした。

http://magomago1.org/schoolchimering202003/
次は、「89)元作業療法士の担任の先生より~特別支援学校、誰がために鐘は鳴る~」になります。