担任の先生より

1011)特別支援学校 支援学級がいいか、支援学校がいいか(本編)

「支援学級がいいか、支援学校がいいか」について、前振りで年度始めの状況など、ほんわかとした雰囲気をつかんで頂いたところで、本編です。

【場所・時間】
学校の場所は近いでしょうか?遠いでしょうか?どの学校は遠いと感じ、どの学校なら近い(または許容範囲)と考えるでしょうか?

よく話題にあがるのが、子どもの通学時間です。「スクールバスを利用して頂ければ、バス停から〇分で学校につきます。これなら、負担が大きくなく登校できますね」です。候補にあがっている学校・学級にはスクールバスがでていますか?

自宅からバス停まで、自宅から学校まで、どうやって行くか、時間と経路、手段を一通り描いてみることをおすすめします。いくら学校の内容が良くても、送迎に無理がでる、移動時間が長すぎるといった場合は、日々の継続がキツくなってきます。

通学だではありません、体調が悪くなったときにお迎えにいける距離でしょうか?行事や保護者面談、説明会もありますが、随時対応するのは保護者や代理になる人です。登下校のスクールバスに間に合わなかったら、送迎するのは保護者の責任になります。対応できそうでしょうか?

【進路】
学習内容や環境面はさておき、高等部を出たとき、進路を決めることになります。地域性、子どもの障害像、子どもの社会性、子どもの能力、子ども支援やリスクの程度だけではありません。進路を紐づける情報量とネットワークはどうでしょうか?

特別支援学校では、障害をもった子どもが入学してくる学校として機能しており、高等部に入れば職場体験や実習が行われ、地域の企業や職業センターなどとつながりを持っていることが多いです。知的の高等部に多いのは、「進路があるので、それに備えるために特別支援学校にきました」というケースです。それまで地域の普通学級や特別支援学級で頑張ってきたけれど…という生徒さんが多いです。保護者が進路先を探すことに注力できるなら、支援学校でも支援学級でもいいと思います。

ノーガードで通所学級の生徒さんと、進路先をめぐって競争するのは賢明ではないと思います。障害をもった人に対応した進路先を探す、通常の企業の障害者採用枠に入る、その子が勝負できる分野がある、も含めて、「居場所」をどこにつくるか考えることにつながるので、無理しすぎない、妥協しすぎないところが探せればと思います。

【環境適応能力】
お子さんの環境適応能力はどうでしょうか?

小中や中高一貫校も増えたとはいえ、小学校から中学校、その後高等学校と、校舎は変わります、場所や通学手段、同級生の顔ぶれが変わります。支援級にいくと、それらの変化を大なり小なり受け止めなければなりません。環境の変化にもまれて強くなるか、適応できずにパニックになったり、引きこもったりするか、学校側は予測も確約もできません。途中変更はメリットになったり、デメリットになったりします。

【お友達】
支援学級では、通常学級と特別支援学級が存在し、障害種別に分けられないケースもあるのではと思います。障害種別がある程度分けられないと、全員が参加できる授業を前提につくられるので、集団の特性に合った授業がつくりにくくなります。学級に入れる先生が少ないと、当然習熟度別の授業はできませんし、個別の支援に入れる割合も当然少なくなります。

支援学校でも、担任の先生が一人という学級も存在し、先生がトイレにも行けないこともあります。特別支援学校はイコール手厚いというのは間違いかもしれません。ただ、学年のお友達のメンバーは著変なく進級していくことが多いので、いい意味でも、悪い意味でも「安定している」といえるでしょう。

いずれにしても、先生の力量以前に、先生の数、お友達の数、障害種別の分け方、先生とお友達の人数比率、これは結構指導に影響するので大事です。

【学習環境】
支援学級だと、通常学級に在籍する児童生徒とかかわる機会があるので、よりノーマライゼーション的な環境に触れられる場所だと思います。ただ、うまくいくか、厳しいものになるかのリスクが大きいように思えます。小学校のときはフレンドリーでも、中学生や高校生になると、考え方がクールになってくるので、そのあたりはどうでしょうか?

先生のもっていき方にもよると思いますが。子どもたちの性格なども影響すると思います。子どもの世界はこうあるべき、先生だからこうあるべき、というのはあると思いますが、大人の世界はどうでしょう?理想と現実はうまくいかないことがある、というのは誰もが知っていることです。どうありたいか、どこまでなら許容できるか。リスク対応はできるか、だと思います。

【あとがき】
支援学級で働いたことがなく、様々な特性のある地域格差も知らないので、今いるところで感じていることを列挙しています。偏りがあるかもしれませんし、普通と思っていたことが特別なことだった、ということもあるかもしれません。しかし、学習環境や進路(キャリア)も含めて、どんなことを意識して判断すればいいか観点を提示できたのではと思います。

子どもだけでなく、保護者とエッセンシャルワーカーも幸福でありますように。