担任の先生より

1029)特別支援学校 段階付け・スモールステップ

年末になってきました。

これまで学校として取り組んできたものをまとめ、次年度に向けて準備する時期です。

今回、校内の研究(授業をよりよくする、児童生徒の理解を深める、など)のまとめもするようになってきました。書くことは毎年似ていて、「スモールステップ」、「〇〇を取り組む」、「分かりやすい授業」「活躍できる」、などが列挙されるのですが、気になったのが、「段階づけ」の解釈でした。

「~が難しい」「~ができない」

それについて、なぜできないか検証して⇒できないところの一つをとりあげて⇒一歩踏み出せばできそうな課題を提案してみる、というのがよくあるスモールステップのパターンです。

しかし、このパターンは一歩間違うと、泥沼にはまる可能性を秘めています。

【スモールステップの沼】
スモールステップの泥沼には、いくつかのパターンがあります。気づいたものをいくつかご紹介します。

そもそも無理
ニンジンが食べられないなら、「まずは爪の先ほどのものを食べさせてみよう」というものです。量が少なければできるだろうと、食事の中に混ぜ込んでみるのですが、本人にとっては「無理なものは無理」ということがあります。

昔、ドラえもんの中で、のびたくんがニンジンが嫌いなので、お母さんがニンジンを見えないようにすりおろしてハンバーグにまぜて食卓に出す、ということがありました。のびたくんはすぐに気づき、「ママ、ひどいー!」と拒否しました。

ママ的には、気にならない程度に、食べてしまえば大丈夫でしょと思うかもしれませんが、無理なものは無理なこともあります。理解しにくい割り算を小学部高学年から高等部までずっとやり続けた子がいました。結局、彼は割り算を理解できないまま卒業していきましたが、それでよかったのでしょうか?

あくなき挑戦
発達段階に挑む場合もあります。以前、このブログでも書きましたが、「この課題ができれば、この概念が理解できている、これが分かれば次のこれに挑戦できる」というやつです。

教員はおもちゃ(教材)を準備して取り組ませる、できてきたら、次のものを提案してレベルアップを図る…のエンドレスループです。そのうち、どうやってもやりきれないレベルまできます。

「これまでの段階はクリアできてきたのだから、基礎は分かっている。なんとかできるようにしなくちゃ」と、あの手この手を使っていくのですが、手ごたえがなく、教員と子どもが次第にイライラするようになっていきます…。

なんとかできた⇒ほめて意欲を高める⇒工夫してできた⇒発表して賞賛された⇒なんとかできた⇒保護者に伝えて喜びを共有…。

本当に、その概念が理解できたのでしょうか?ただ教材の扱い方をパターンで覚えただけかもしれません。高くなり過ぎた達成度を今更下げる訳にもいかず、教員は「次はどうやって保護者にできたと伝えればいいのだろう」と頭を悩ませることになります。

見立ての間違い
「できない原因」の見立てが間違っている、気づけていないところがある、複数からみあっていることが整理できていない、などによって、指導目標と指導の手だてがずれたまま日々を過ごすこともあります。

ここは力量のある先生のほうが取りこぼしの確率が下がりそうですが、人は万能でもありませんし、いきついた評価の先に「どうしてもできないものがある」ことに気づいてしまったとき、指導目標として立てられるものが見当たらない、何を目指せばいいのか分からないといった事態に陥ります。(そんなときは、気持ちを切り換えて、他にできることを探したほうが良いです)

分かりすぎるのも、辛い場合があります。

愚直にやっているほうが幸せなこともあります。

【沼から出る方法】
視点をかえて、他を目指すのも一つですが、できそうな「他」をやりつくしてしまった感がでたときは、先々の担任の先生が煮詰まってしまうので、もう少し違う視点も必要です。

それは、段階付けを高くしていくのではなく、横に広げていく考え方です。

今の先生は「体験よりも能力重視」、「今よりもできる」にとらわれがちです。

どうも、個別指導計画ができて、能力主義的、成果主義的なところに追いやられる傾向が強くなっているみたいです。指導をじっくり考える時間がなく、合理的に、科学的に考えるあまり、視野や視点が狭くなる傾向があります。

うまくいっている間は調子いいのですが、ちょっとつまずくと、すぐに挫折してしまいがちです。

それはすごく苦しいので、どちらがいいとかいう話でなく、デジタルとアナログを両手にもつことが必要で、その点で若い教員と経験のある教員が協力できればいいなと思っています。

話はそれましたが、学習時の段階づけについて

同じ観点でも教材が違ってもできるか
一緒にやる先生が違ってもできるか
場所が変わってもできるか
数を変えてもできるか
物が変わってもできるか
言葉かけの量やタイミングを変えてもできるか
順番を変えてもできるか
友だちと交代でやってもできるか
教材の置き場所をかえてもできるか

変化のつけ方は無限にあります。

同じ教材で、同じやり方でやっても、実は毎回変化が起きています。

体調も違うし、気温も違う、机から教材を落としちゃうこともあります。それでも、修正して、適応できるかみることで、子どもの適応力や判断力などがついてきます。

どうぞ、目先の発達段階に追われることなく、一緒に「これできる?」「これならできる?」とかかわりながら取り組めますように。