摂食に関する研修を実施することになりました。
摂食というと、まさに「食べること」なのですが、飲むことも含まれまして、栄養摂取というなら同じじゃないかと思っても、注入などで栄養をとることは「医療的ケア」に属すると、住み分けや解釈が難しい面があります。
さて、特別支援学校では食べることに関して課題のある子どもについて、医師や言語聴覚士、作業療法士などから助言・指導をもらうことがあります。これについて、ニードのある子どもと担任だけでなく、知見を他の先生にも伝えることも行われています。
多くの場合、ケース会(症例検討)のような形で行われますが、ウケがよくないです。今回の研修の事後アンケートを見ても、多少の配慮では満足されないんだと感じました。
【懸念していたこと】
知的障害に関する指導を行っている先生は、複数の子供を視野に入れつつ、眼の前の子ども一人ひとりに言葉や手をかけています。それが仕事だとして、個々の性格や発達段階や特性などをふまえて、どうすれば「給食の指導」というタスクを完遂できるか考えることが多いです。つまり、個別に特化して評価(アセスメント)し、仮説と検証を重ね、質の高い指導を継続することは、指導体制上かなか難しいということです。
「集団の指導が仕事だから、できることをやるだけさ」、「個別に特化した指導を地道にやりたいこともあるけれど、実際は難しいからね」、「目の前の子どものことならまだしも、他の学部の話を聞いても役に立たないよ」という教員には、個に特化した説明を伝えても、関心をもってもらうことは難しく、場合によっては虚しささえ感じさせるのではないかと思いました。
そこで、紹介されるケースは縁遠く、日々自分が行っている指導に使えるものではないかもしれないけれど、ケースを通して摂食に関する知識やアセスメントの仕方につながるものはつかんでもらえるのではないか、と思いました。
【やったこと】
まず、紹介されるケースを理解してもらおう、ケースに関する指導の理由を深く紹介しよう、といったことは捨てることにしました。また、講師である医師が話すことは緻密で、深く、根拠ある、といったことを大事にお話されますが、それがかえって研修にきた先生との距離を広げてしまうことがあるのですが、私から条件をつけることははばかられます。せめて、ケース検討の場でつかまえられる明確なテーマを1つか2つに絞って提示してみよう、また、資料を作成して、医師の話がよく分からなくても、自分なりに資料と映像をつきあわせて、摂食に関する視点や理解する術に気づいてもらえるようにと準備しました。
また、担任を相談として設定し、多くの担任が同様のことに不安や疑問を抱くであろう課題を「医師への質問」として紹介してから話が始まるようにしました。
【結果】
研修会の後、アンケートをとってみましたが、色々な意見が寄せられました。
違う学部の子どもなので、関心がもちにくい
同じ学部の子どもについてもケースとしてとりあげて欲しかった
以前、専門家から説明もなく、「こうすればいい」と指導方法を指示され、今回の研修のような解説がなかった。
などです。
ケースに寄せると、近しい教員は熱心に考えるけれど、そうでなければ冷めてしまう。
ケースは出しても、基礎基本に特化して、多くをもとめない。
ただし見るポイントはここ!と決める。
研修会の展開については、自分なりに想定通りにできたのですが、研修会を主催する部署の自己満足や成果の発表の場でなく、研修を受ける教員に役立つものをと考えたとき、今回の内容とアンケートをもとに、よりとらえやすく、今後に活かせる情報提供にできればと思いました。
が、今の部署に来年度もいるかどうか分かりません。
いなければ、実施要項や反省を見て、できる人がやれば進化しますが、やっつけで仕事をする人が引き継いだら退化するでしょう。そうなることも珍しくないので、あまり先々に希望を持たないようにしています。