先日の介護現場で起こった転倒事故について、職場で話す機会がありました(フォーマルでない場で)。
Aさんが便座に座っていて、「ちょっと待ってて」と声をかけて、教室にいるBさんの様子を見に行った。Aさんが立ち上がって転倒した、というものです。介護の現場も、ワンオペ(1人でワンフロアみる)がありますし、ユニット型だと2人でしょうか。とにかくどこかで個別対応すると、もう一方は充分に目が行き届かない状況に陥りがちです。
このような場面は学校でも頻繁に起こるので、ニュースを聞いて、他人事とは思えませんでした。
【どう対応するか】
学校で上記のような場面があり、見守る人も増えないとなると、トイレに行くたびに他の児童生徒も引き連れて行く、でしょうか…。「私はトイレに行きたくないのに、なぜ行かねばならないのか」、「私は本を読んでいたのに、なぜ中断せねばならないのか」といった不満がでることが予見されます。
そう、問題は「予見性(よけんせい)」なのです。「こうなることが予想された、でもそれに応じた対応をしなかった、なので、罪を問う」という流れです。
知的障害があったり、認知症があったりする人が大勢いると、全員に転倒の予見性があるといえます。一体、どうすればいいのでしょうか。
行政書士の山田拓郎氏は、老人ホーム検索サイト「みんなの介護」のなかで、事業所が取り組むべきこととして、以下の4つを挙げています。
・研修を行う
・当事者意識を持つ
・風通しを良くする
・介護職員の権利も擁護する
「能力向上と仕事の工夫、あとはチームワークでなんとかしましょう、でも無理しないでね」
みたいな感じでしょうか。現実として、これで解決できるのか不安です。身体拘束は人権侵害とされているので打てる手段はそう多くありません。そうなったときにできることは、置かれた環境下で黙って動いて、事故をブロックし続けることでしょうか。しかし、そうすると事故が起きた時、「現場からの報告はなく、状況が把握しきれませんでした。職員が問題なくできていると信じておりましたのに、残念です。」のように言われてしまうかもしれません。
私だとどうするでしょうか。
以前、どうしようもない状況になったとき、直の上司(?)に相談しつつ、対応を求めました。自分はこの範囲の責任をもっていて、現実的にここまでしかカバーできない。残りの部分をフォローしきれないが、どうしたらいいでしょうか?みたいな感じです。
考えない上司だと、キレ気味に「なんとかしろ」、「工夫しろ」と言いますが、ここまで考えて対応しました。これ以上どうしたらいいですか?と伺いをたてると、その他のタスクを減らして、リスクマネージメントに振り向ける余力を増やせるよう対応してくれました。
工夫できる、対応できることも専門性ですが、予見する力をつけて現場を安心・安定させることも専門性だと思います。うまくタスクを詰め込むことも必要ですが、人材不足や多様な価値観をもつ人が集まる現状では難しい面があります。
現状をふまえて何を残して、何を捨て、どこに力を入れるかが大切なので、環境を把握して、作業分析できる人材が求められています。