担任の先生より

1112)特別支援学校 どれだけのリスクを受け入れるか

他の学習グループへの協力について書いたので、他(隣)の学級への協力についても書いてみたいと思います。

大事なことは、単なる数合わせや、リスク分散だけではありません。これらを意識しつつも、児童生徒が流動的に動く中で、教員一人ひとりが抱えきれないタスクを背負う瞬間や時間帯を少なくするチームワークが必要です。

といっても、そもそもの役割をおさえたうえでのことだと思います。

学級担任は、その学級にいる児童生徒の真ん中にいるべきだと思います。誰か一人に振り回されて、核になる先生がいないと、児童生徒の帰属意識や精神的支柱を失うことになり、安定さに欠ける学級になってしまいます。

副担任は、場面に合わせてつく児童生徒を変えたり、スペースを埋めたりすることが大事で、必要以上に子どもを抱え込んだり、担任と並ぶくらいの指示や反対の意見を乱発して、ダブルスタンダードを発生させることは控えるべきだと思います。

【場面に応じた役割を果たすには】

自分だけでなく、他の教員それぞれが、どれくらいのリスクや児童生徒の安全を見ることができるか、その容量を把握することが必要だと思います。

私ができる範囲を考えてみます。目的地に移動する場合を想定すると、やや歩行や移動に不安のある子どもを近くにして、ついていけば道に迷わずに歩ける子を一人、シンプルな道であれば自分で移動できる子を二人、これくらいが日常できる限界ではと思います。もちろん、これは児童生徒全員の実態を把握したうえのことで、未知の部分が大きくなれば、その容量はガクっと小さくなります。

それ以上の人数を抱える場合は、他のグループや教員と抱き合わせをつくることで、一番安定的に移動できるフォーメーションを考えると思います。

とにかく、授業中や移動の場面で、自分を含め、周囲の先生が容量オーバーの責任を抱えていないか、自分の現状は余裕があるのかないのか、そのへんを意識して計算しています。

【うまくいかなかった事例①】
隣の学級は1人の教員が5人の児童生徒を抱えていて、そのうち自分勝手な行動をしたがる子どもが2人いました。これは明らかに負荷が高い状況で、周囲の協力を求め、動くたびにバランスを調整しなければならないと思われました。

しかし、学級担任は助けを借りることが許せない、自分はできない人と思われたくなかったのか、サポートを拒否、口癖は「大丈夫です!」でした。

だからといって、同じ学年の学級が停滞するのが状態化するのは困りますし、孤立させる訳にはいかないと、それとなくサポートしていたのですが…。

遊出と転倒がセットで起こり、機能不全が発覚してから学級にいる児童生徒の保護者から次々とクレームが寄せられるようになりました。

【うまくいかなかった事例②】
それぞれの教員が、どれくらいのタスクを受け入れられるか、その計算は必要ですが、タスクを増やすということは、かかる責任を受け入れる覚悟や合意が必要です。

私が子どもを並べて移動しているとき、隣の学級の先生が、自分の学級の子どもに、「A先生(私)の後をついていくんだよ」と指示しているのが聞こえました。これは、私の合意なしに、自分がもっている責任を投げてくる行為です。

これに合意してしまうと、過負荷な状況を作られる可能性がでるだけでなく、何かあったときに「先生に託したつもりだった」「私は聞いていない」の責任転嫁の応酬になりかねないと思いましたので、きっぱりお断りさせて頂きました。

【とはいえ】
マンツーマンでも事故は起こることがありますし、5人連れていても安全に移動できることもあります。いずれにしても、以前からできているから絶対大丈夫はありませんし、リスクは少なければ少ないほど良いと思っています。

だから、自分ができるだろうと思っても、何かあったときに収拾がつかなくなるような責任は負わないようにと意識しています。同時に、誰かがどうしようもないリスクを背負ったまま児童生徒の指導を担っている状況も軽減できるか、周囲に目を配っています。(対応するために、自分の学級のタスクを少なくすることも)

どうしようもない状況で、事故などが起こったときの落胆や負担感は、常に気をはって指導している先生を大きく傷つけることを知っているので、そういったことは、できるだけ無いようにしたいと思うのです。