ちょっと昔あった話を持ち出して、話題にしてみますね。
担任からの相談で、「右手で、鉛筆をもって、字が書けるように支援したい。」
「うまく名前が書けるようになってきているので、期待している。」
というものがでたとします。
そこには、外部専門家(有償で来てもらっている)の理学療法士が関与していて、その人抜きで話を進める訳にはいかないみたいです。
【字を書きたい子のざっくり評価】
車椅子座位で、身体を右、前方に傾け、顔を机上に近づけて書きます。
左肩は後ろにひいて、すごく力が入っています。
つまり、書くという行為をするために、身体全体のエネルギーを姿勢保持に費やしているという状態です。
できるものなら、「できた!」、「できる!」って言いたいですよね。
しかし、それは日常的に使う行為としてか、日常でないにしろ誰もがしている行為を同様にできたとする喜びか微妙なところだなぁと感じていました。
【PT(理学療法士)の意見と、教員の意見】
「右で書くんだし、右の上肢動作の練習をどんどんやればいいんじゃないですかね。」
ということでした。目的のために、最短距離で最善の方法を、ということだと思います。
しかし、担任(または学校の教員)目線からすると、どこかモヤモヤするのです。
・それでは、姿勢がどんどん右に傾くことが強化されていくのでは(姿勢の崩れ、そくわん)。
・「書く」行為に関する目標がない。日常の負担感も考えると、書くことだけに集中していいのか。
・感覚や運動の左右差はどうするのか。
・表出する(書く以外も含めて)手段について、もう少し検討したほうがいいのでは。
【対応に向けての観点の整理】
①ニードは「今よりうまく字が書けるようになる。」です。ただし、姿勢の崩れや力が過剰に入るので、担任としては、どれくらいの量、内容について書字を求め、その他の意思表示は何をメインにするか準備する必要があります。
②PTの言う通り、右上肢に特化した練習をすれば、「手の使いかた」は多少向上するでしょう。いつ、どれくらいの時間、何の場面でやるか、これも担任が生活全体のなかから捻出することが必要だと思います。週に1~2回の自立活動の時間だけで、というなら練習したアリバイだけで、実効性ある対応とは言えないでしょう。
③書字に関する身体へのストレスはいろいろなところに出ています。どこに負担感があるのか、それぞれの負担感に対して、いつフォローするのか。
このような①②③全体をみて、強すぎるところ、弱すぎるところを調整していきます。
【今回の話題だけではないですが】
特別支援学校には様々なニード(潜在的なものも含めて)がありますが、取り出し方と取り扱い方を間違えると、学校生活全体が窮屈になったり、過負荷になったり、的外れなものになったりするので注意です。
http://magomago1.org/203howdoyouuseyourownboxspace/
前回のブログは「203)教室の端に、「あなたの棚だよ」と教員用の物入れスペースを提供されたら、どうする?」でした。
http://magomago1.org/205whatdoyousetoninunderthedesk202009/
次回は、「205)特別支援学校の職員室のデスクに、用意しておいたら便利なもの」です。