学校の文化 担任の先生より

324)特別支援学校教員のコミュニケーションスタイル

学校の先生は「前に出すぎる」、「喋りすぎる」、「話が長い」といったうわさをよく聞きます。
特に結婚式のスピーチでは、登場するところからため息をつかれることがあると聞きます。

「あぁ、また長々と空気を読まずに、時間を気にせず喋るのか…。」と。

【学校の先生=おしゃべりか】
では、学校の先生は、総じてどこでもよく喋り、話が長いのかというと、そうではありません。
職員室での会議や部会では、いつも喋る人は決まっています。
その他の人は黙って聞いて、会議の後などで大体不平不満を言い、持論を展開することがあったりします。

①声に出して言う人の特徴として、母集団の中で立場が上、担当業務として代表者になっている、自分の主張が正しいと考え、それ以外のことは受け付けたくない人、などが挙げられます。

②反対に、何も言わない人は集団や権威のある人に逆らわず、全体が進む方向性に横やりをいれたくない人、雰囲気を読んで口を閉ざす人などが挙げられます。

【主張する人】
自分の価値を周知して全体を思う通りに動かしたい。
無駄な協議は省いて、効率的に物事をすすめたい。

そのようなタイプは合理主義的で、雰囲気や状況に忖度しない「ローコンテクスト」なタイプに該当します。意見を出してみて、それに呼応しない人や煮え切らない態度で不平不満を述べる人に対して無能だ、消極的だと感じる傾向が強いようです。

 学校ではリーダーシップを発揮したい、周囲に遠慮しながら仕事をするのは面倒だ、など感じる人が積極的に昇格する傾向があると思われます。

【主張しない人】
これに対して、ハイコンテクストのタイプの人は周囲の雰囲気や立場を尊重する傾向があります。
話している人に対して横やりを入れることなく、議論を避け、円滑に進めばいいと考える傾向が強いようです。

心情として合意できるものであれば、それに従います。
不満があっても許可がなければ発言せず、黙って経緯を見ています。

そのため、場を乱さないという長所がありつつも、積極的でなく、言うことを聞いていない、当事者意識がないと批判の的になったりします。

【ハイコンテクストとローコンテクストの分布】
エリン・メイヤー(2016)は著書「異文化理解力」のなかで

ローコンテクストについて、「良いコミュニケーションとは厳密で、シンプルで、明確なものである。メッセージは額面通りに伝え、額面通りに受け取る。コミュニケーションを明確にするためなら、繰り返しも歓迎される」といっており、その代表としてアメリカ、オーストラリア、カナダ、ドイツなどを挙げています。

ハイコンテクストについて、「良いコミュニケーションとは繊細で、含みがあり、多層的なものである。メッセージは行間で伝え、行間で受け取る。ほのめかして伝えられることが多く、はっきりと口にすることは少ない。」といっており、その代表として日本、韓国、インドネシア、中国などを挙げています。

【専門家や外部との付き合い】
学校の先生の発言権について、昔はなべぶた組織と言われたものです。

一握りの管理職と、その他の教職員が位置付けられていましたが、最近は管理職とその他の教職員の間に中間管理職を置くヒエラルキー構造になっています。

その反面、大多数の現場の教職員は「目の前にいる学級の子どものことを分かっているのは自分だ」という自負があり、こと指導に関しては引きたくないという心情も働いています。

そのため、組織的な仕事や上司等の指示のなかで学級経営を脅かすものがあると察知したとき、公務員であるが故にそれに従う(抑圧する)場合と、自分が信じる教育観に則って反論する場合があります。

では、担任の先生が専門家等と話すときは、どのような心理が働くのでしょう。
もし、担任の先生が学校の権威やルールに忠実で、混乱を避けたいと考えている場合、予算を割き、学校として呼んだ専門家を尊重しなければと考えて、反論は出さずに同調する方向で動くでしょう。
同調したようで、(参考になりましたと)実際の指導に取り入れないこともあります。

一方、自分の教育観(専門性)に忠実な場合、学級経営に関しては自分が上だと自負している場合は専門家の話に対して議論したり、意見交換したり、担任の立場や状況を説明して、合意事項ができるか動きます。専門家が妥協や合意に応じない時は、対話を諦める、攻撃的な議論、事後にクレームを出す、などが考えられます。

【抑圧か尊重か】
担任の先生は積極的に発言せず、ただ聞き上手な雰囲気で話すことに物足りなさを感じる専門家もいます。そのときは、それも職務だと尊重しているので聞くのか、専門家の権威を尊重して聞くのか、合意しているから聞くのか、観察する必要があります。

それによって、専門家は態度や発言に関する戦略を考えることが必要で、自分の専門性を披露するだけで終わってはならないのです。

https://magomago1.org/323updateteacherslisence202101/
前回は「323)教員免許更新制度について」でした。

https://magomago1.org/325teachersnonstraightcommunication202101/
次回は「325)自分よりハイコンテクストな教員と仕事をするとき」です。