医師・介護・看護 担任の先生より OT・PT・ST

398)特別支援学校 神の手は禁じ手

先日、学校にきた理学療法士の方に相談、ということで、ほぼ一日教室での様子を見てもらいました。
テーマは〇〇するときの車椅子の角度調整、腰から背中、首の立ち上がり具合をどう調整するか、です。

そのテーマをもとに、いくつかの場面を見てもらいました。

【見てもらった場面】
①飲み食いするところ
食べることは子どもにとって楽しい、苦しい、頑張る、待ち遠しい場面です。
お腹がすいていれば食べますが、嫌いなものになると顔をそむけます。
スプーンを渡されたら、すくって口まで運ばないと食欲は満たされません。
姿勢保持、上肢の運動、摂食嚥下、注意力、判断力など、いろいろなものが評価できます。

②介助歩行
立位は全身を一直線にして保持できるか、どこを使って姿勢を保持するかみることができます。
どこを介助しているか丁寧に見ることで、何が姿勢保持に不足しているか見ることができます。

③床上での移動
姿勢反応、上肢の支持、視線、転倒しない環境下ではどのように動けるか、体幹の動き、などを見ることができます。

④車椅子座位での授業
ただ座る姿勢だけでなく、その姿勢を持続させることができるか、どれくらい保持できるか、車椅子座位という制限された環境のなかで、どれくらい自発的に動けるか、などを見ることができます。

【観察場面の選定】
具体的に見て欲しい場面があれば、そこが一番重要です。
見てもらった場面のなかで、「ここはどうなっているのだろう?」、「こんな場面ではどうなるか?」など見たことを検証する場面を追加で提示できれば、より具体的な助言・指導が得られます。

何をターゲットにするか選びきれないときは、いろいろ見てもらえばいいと思います。
A、対象となる児童生徒はこんな状態ですね、と大枠を提示してもらう。

B、この子はこういうことが課題になっています、と指導でねらうポイントを列挙してもらって、後で担任が自分でできそうなことを選ぶ、でもいいと思います。

C、相談表にないことでも話を続けているうちに、ふと「あれ、これはこういうことだっけ?」と気づくことがあります。こういうひらめきは重要です。

D、愚痴る、褒めてもらうこともアリです。指導する、指導するポイントを選ぶときは、それが妥当か不安になることがあります。誰かと共有することで勇気をもって続けたり、変更したり、追加したり、削除したりすることにつながります。

今回の相談では、3割が相談表の内容に沿ったもの、4割が雑談、3割がリハや外部の関連機関に問い合わせてもらって糸口をつかもう、となりました。Dを考えると、大半が雑談になっても構わないと思います。担任が日々の指導について「教員以外の人と話をした」という経験は、様々な人と連携し課題を解決しなければならない局面のときに活きてきます。

理学療法士も作業療法士は、ここで専門性を発揮して、子どものために何か残さなければならない、担任に何か伝えたか実績を残さなければならない、と身構えすぎだと思います。

臨床で言ってきたはずです。「答えは患者さんの中にある

担任へのコンサルテーション場面でも同じで、「答えは担任の先生の中にあります」。私(医療人)が思う子どものためでなく、学校にいる子どもにとって、担任にとって、幸せになれることは何だろう?そう思いながら対話してもらえたらと思います。

【神の手は禁じ手】
話は少し脱線しましたが、理学療法士や作業療法士等の医療職の方と話すとき、専門用語が分かるのは強みだと思います。専門用語はそれぞれ定義に基づいているので、曖昧な解釈になったり誤解を招いたりすることが少なくなります。また、医療職の方が専門用語を封印して、平易な言葉にしなければと気を遣うことも少なくなるからです。

お互いに腹を割って話すうちに、学校ではそこまで求められないであろう内容に踏み込むことがよくあります。そういうときは、それはそれで自分の中で交通整理してグループや学年の教員に伝える、誰でもできる指導や内容にするにはどうするか医療職の方と更に話し合う、ということをしています。

専門家の助言・指導を得ながら「自分だけの(特別な・専門的な)神の手」を取得することは、そう難しいことではありません。しかし、学校は神の手ではなく多くの教職員の手によって支援が行われるため、特別よりも一般的なことが大事です。それでも、神の手を使ってみたい(使わせてみたい)方は、自己完結できる場面でマニアックにお使いいただければと思います。



前回は「397)特別支援学校で臨床(臨地)実習指導を行うとき」でした。