渡辺裕美 編著(2015)介護福祉士になるには、ぺりかん社を読んでいて、メイドサーバント症候群とパーソンセンタードケアに関する記述がありました。
これによると、メイドサーバント症候群とは、「メイドのように動きまわる介護職員と、介護職員にやってもらうことを期待する利用者がいる『業務中心介護』の比喩」と書かれていました。
ん?この状態は学校でも見られるぞ…。
大人がかまってくれるのを期待して、わざと物を投げたり逃げ出したりする児童生徒であったり。
自分の子どもに手をかけてくれと一方的に求めてこられる保護者であったり。
それに応えることで子どもとうまく触れ合っているという先生であったり。
さらに、本書では、それぞれについて図表で示されていました。
【メイドサーバント症候群】
業務中心
①業務を手早く行おうとする。
②誰かが判断し、こうやりなさいと指示したことを行う(判断しない・できない)。
③本人ができることも介護職のペースで手早く行う(待たない)。
④画一的な介護。
⑤利用者がコントロールできることがない。自分で選び自分で決めることはない。
↓
⑥利用者は受け身になる。
介護機器が乏しい。
活動や参加は低いまま。
セルフケアは失われる。
自立は支援されない。
【パーソンセンタードケア】
利用者中心
①本人を知ろうとする。
②専門職として個別のよりよい介護を組み立てようと考え、判断する。
③本人ができることを発見し、できることは本人が行えるようにする。
どうやれば本人の力が引き出せるか、意図的に働きかける
④応用の連続。場や人によって違う。
⑤利用者の意思を汲み取り、本人が選べるように選択肢を示し、コントロールできる。
↓
⑥利用者は能動的になる。
介護機器や自助具で環境整備。
活動や参加を高める。
セルフケアを維持・拡大する。
自立を支援する。
そうして、「介護福祉士は、利用者に寄り添い、もてる力を引き出し、活動・参加・生活機能を高めていくのです。つまり、パーソンセンタードケアによる介護福祉実践が、専門性の高い実践となります。」と書かれていました。
【知的障害部門で学んだ専門性】
専門性について語るとき、「質」、「意味」、「価値」について説明されることが多いと感じています。
対象者は1人、それを支援するのは私、この関係なら対象者をよく見て、対話し、主体性が引き出せるようにと言われるでしょう。
私も初めて知的障害部門に入ったとき、個別の指導を重視する傾向があって、1人の子どもについていると、「よく周りを見て、他の子が視界に入ってない!」とベテランの先生から指導されました。
パーソンセンタードケアは個々を大事に考えるときの理想だと思います。
大勢を1人や2人で支援するときは、対話などと言っていられません。
安全をどう確保する?
個別対応が一人でたら、残りの1人でどうする?
全員時間までに食べ終わるようにしなければ、片付かないし、厨房がパンクする。
限られたマンパワーと設備、タイムテーブル、その中でできることはないか考える時にできる範囲のパーソンセンタードケアの実践はできないか?が現実的な対応だと思います。
つまり、「まず運営面の穴を無くす」、その中で、「パーソナルセンタードケアを求める工夫をする。」ということです。
今ある人的資源は十分か、人的資源のなかでできることは何か基準はあるか、必要な物品や経費はあるか、計画や日々の運用に無理はないか、これらが検討されないまま、理想で専門性を定めてしまうと、現場の人はどれだけ頑張っても報われません。
私は利用者も大事ですが、支援者も大事だと考えています。
利用者と支援者、それぞれが尊厳を尊重しながら共存できる環境が持続可能な生活環境に結び付く気がします。
https://magomago1.org/458canfamilybeacareworkerfortheirfamily202108/
前回は「458)在宅介護、生活支援を家族がやれば…。」でした。