学校の文化 担任の先生より

521)特別支援学校 教育実習3日目 個別学習は結構むずかしい、予備カードは必須

今日は、教育実習だけではないのですが、研究授業をするときに「個別学習は結構難しい」という話をします。人に見られる研究授業、グループなどの授業をしようとすると、子どもの数だけ実態把握と説明をしなければならない、サブティーチャーへの説明や指示が大変だから、個別学習がいいという話を聞いたことがあります。

確かに、子どもの数が多ければ、実態と目標を人の数だけ設定することになりますし、全員を参加させる授業内容や展開を意識しなければならないので大変です。しかし、それでも私は「個別学習に行くのはもっと難しい、本当に大丈夫?」と思います。理由はいくつかあるので、思いつくまま書いてみます。

【①遅刻・欠席したらどうするの?】
これは、私が研究授業(グループ学習)のときに食らいました。グループ全員が通院などのために休みとなり、授業が成り立たずに延期になりました。当然、指導案の実施日を訂正して出し直しになりました。教育実習だと実施できる日は限られています。通院です、体調を崩して数日登校できません、入院しました、などはありえない話ではありません。

【②実態把握と簡単に言うけれど】
該当する授業に限定せず、その子の課題と、こうなって欲しいという理想はありますか?
その授業を通して、何を身に付けて欲しいか、身に付けたことで生活がどう変化すると思われますか?
その教材を選んで使用した理由は何ですか?
授業中の「〇〇」という言葉がけは、どうしようと考えておっしゃったんですか?
実態のなかに記載されている、〇〇のような行動が指導中にでたとき、どう対応されますか?
その時間の中で、先生が一番大事だと思っている場面はどこになりますか?

挙げ始めたらきりがないですが、個別であるが故に、集団の指導を進行するために妥協する、なんてことは無いはずです。ネガティブであろうと、ポジティブであろうと、一挙手一投足に意味と理由があると考えて、上記のような質問を出すかもしれません。(相手の力量をふまえて調節はします)

この子の発達段階はこれくらいだから、去年からやっている、〇〇教授がすすめて下さった内容をやってみました、などの理由であれば、「1人の教員として、あなたがかかわる意味は何ですか?」、「自分が考える年間目標に照らして、その課題設定はどこに合致していますか?」と思ってしまうでしょう。(さすがに、これは言わないかな)

【③何をもって終わり、が決められますか?】
4つか5つくらいの課題を準備して、順番にやっていくというのはよくある個別学習のパターンですが

それぞれ、何をもって終わりとするか決められるでしょうか。時間できるのは確かですが、消化不良満載になる可能性もあります。課題ごとに、これができたら最低ラインでオッケー、今日はここまで質をあげたら終わりにしよう、などと決めておくことで、ダラダラ話して間延びすることを防ぐことができます。

【④問題行動や健康課題への対応はできますか】
集団の授業になると、サブティーチャーに保健室に連れて行ってください、連絡をとってくださいと依頼できますが、個別学習だと対応できるのは自分だと考え、それに備える必要があります。また、他害や自傷、教材を投げる、学習に飽きてしまって言うことをきかない、などの行動がでたときに、どう対応するか理由もつけて説明できるようにしておくことが望ましいです。できれば、間に休憩のような簡単であったり、楽しめたりすることができる課題や取組みを予備カードとして用意しておくと便利です。保険をかけることで、授業者は安心して学習場面に臨むことができると思います。

【⑤サブティーチャーはいませんが、本当に大丈夫でしょうか?】
集団での指導では、多少のイレギュラーな事態にも対応できます。授業者が多少下手でも、サブティーチャーの機転で切り抜けられたり、フォローが入って立て直すことができたりします。もし、どうしても個別学習にしなければならない、でも不安でたまらないというときは、指導者2人、児童生徒2人の二組で個別学習を展開すると安心です。情報共有しつつ授業が進められ、不測の事態でパニックになったときは交代して事態の収拾にあたれば良いのです。

ざっと5つ挙げました。

個別学習を研究授業として取り上げることは結構厳しいものかもしれないと感じて頂ければ幸いです。それでも、集団も個別も特別支援学校にある指導形態なので、逃げないでやろうとトライするのは歓迎です。心意気を分かってもらえれば、きっと周りの先生も熱心にサポートしてくれると思います。