担任の先生より

540)特別支援学校 スマイル&お願い、は内容次第

「赤ちゃんは、可愛いことで大人をメロメロにさせて、世話をさせるようにできている。」

そんなことを本で読んだことがあります。無意識のうちに相手を自分のペースに巻き込むことができるなんて、すごい能力です。

が、目の前にいる子どもは大きくなっても、それを確信犯的にやっています。

【できないときどうする】
「いただきます」
ごはんを食べる前に言う言葉ですが、発語がない子どもには、他の合図で食べるよう指導しています。

これは、儀礼的な挨拶だけでなく、これから食べ始める合図、物事の始まりが分かる、促しに応じて行動する、相手が言ったことが何か把握して、それに応じた行動をする、なども子どもによっては含まれるのではないでしょうか。

教室で指導しているなかで、いかに自分たちが複雑な情報処理を経ながら生活しているかと考えさせられます。

「はい、では、いただきますをしましょう」と言うと、それまで平穏な顔をしていたのが、ニコーっと表情を出して、両手を差し出してきます。「それ、やるのね、はい、わたしの手をとって、やらせて頂戴」という意味なのです。

両手を合わせるのが少し苦手なのは分かります。でも、手のひらを3回合わせることは機能的にできないことではないと、私は知っています。なので、「はい、やらないと食べられないよ、自分でやる。」と答えます。

大事なのは、言葉をシンプルにして分かるようにする、というのもありますが、ここは「私は、あなたのリクエストに応えないです。やるのは自分です」というメッセージを伝えることだと思っています。そのため、そう答えながら、私自身の手をたたいて見せて、子どもの手を指差します。

こうします、その手でやるんです、というメッセージ

仕方ないなーと、ぺち、ぺちと手をたたいています。「はい、できました、それでは食べますよ。」これで食べ始めます。

【コミュニケーション】
やって、やって、が強化されたのは、冒頭で書いたように、かわいく見せれば大人はなびくという学習を子どもが積んできたこと、「やって欲しいと伝えることができた」という意思表示への報酬として、簡単に応えてしまってきた教員の二つがからんでいる思います。

安易にリクエストに応えるのはよくない、とただ批判しているのではありません。その子の全体像から、どんな態度を身に付けることが必要か、その子はどんなことができるか、その子の能力を引き出すことができているか、そのあたりを考えたうえで指導しているかということです。

身体の使い方の指導と、できそうなことを提案して実践する学習の繰り返し、この子どもについては、この二点をテーマに取り組みました。