担任の先生より

553)特別支援学校 子どもの歩行、歩けたら次に何をする?

肢体不自由部門に在籍する子どもについて、よく挙がる課題があるので、ここで思ったことを書いてみたいと思います。それは、歩行です。

【見かけた子どもの様子】
見かけた子どもは、まだ小学部低学年で身体は小さく、あどない顔をしています。
大人の手引きに頼りつつ、腰はひけて、足は開いて、膝を伸ばしてつっぱるように立っています。
重心が中心からずれないように、歩行しています。

もう余裕はありません。
それでも先生は「歩けるから、片手を離せるかな。」、「片手を離して、荷物が持てるかな。」といろいろ試していました。

発達段階表のうえでは、寝返り、起き上がり、立ち上がりといった段階を十分ふめていないので、単純に見れば「歩行はまだ早い」といえます。

それでも、この子に立つこと、歩くことを提案して進めたのは誰か。
それは私でした。

【なぜ】
なぜ、歩行を試したかというと、うつぶせから動けない、床上での座位では足を曲げた状態で広げてしまい、足から根っこが生えたようにふんばって(支持面を確保)いました。

左右の重心移動が使えたら、もう少し床上での動作のバリエーションが増えるだろうと考え、①座ってダイナミックな活動をすること、②ガッチリ介助で上体を支えた、足が開きすぎない歩行、を通して左右の重心移動を覚えていきました。

経過は良く、床の上で活動するときの動きのバリエーションが増えてきました。これはこれでいいだろう、しかし、立位・歩行はあくまで練習の手段であって、これが目的ではない。身体の使い方を覚えてきたら、もう一度寝返りや起き上がりの動きに戻って、じっくり積み重ねればいいと考えていました。

【部署が変わって指導が途切れた】
しかし、年度が変わり、私は他の学年に異動になりました。

引き継いだはずの情報は消化されることなく、「歩行ができてエラい」になり、「もっと歩けるように頑張る」に変わっていったようです。もう、同じ学年の子どもではないので、指導に口をはさむことはできません。このまま歩行一辺倒にしていくと、頭打ちはすぐにくるでしょう。

ワイドベースに開いた股関節も使えず、歩行時に軽く曲げる~伸ばすを繰り返す膝の動きも学習することなく、身体が大きくなって重心は高く、体重は重くなっていくことで下積みをするチャンスはどんどん少なくなっていくと思います。

引継ぎが十分でなかった自分のミスではないか、安易に歩行させてしまったことがマズかったのか。
廊下で歩行する、その子の姿を見るたびに、どうすれば良かったのかと考えています。