医師・介護・看護 担任の先生より

565)特別支援学校 卒後の生活、グループホーム

学校生活は、6-3-3の12年間です。
特別支援学校は御存じの通り、都道府県立がほとんどです。

市町村よりも大きな枠組みのなかで学校生活を送ってきたと思いきや、卒業とともに「生活の場は地域です」とばかりに市町村の枠組みのなかに入っていくことになります。

それまで、どうぞどうぞと、舞台を準備してもらっていた状態から、高等部卒業とともに舞台はご自身で納得されるものを選んで、契約してくださいねと言われるのです。

【保護者は元気なうちは】
なかには、ショートステイや放課後デイなどを積極的に活用し、利用実績を作りつつ、地域の福祉関係の人に自分の子どものことを分かってもらおう、存在を知ってもらおうという保護者がいます。

しかし、私が見る範囲では学校の保護に安心して、自宅では保護者、その他は学校のリズムで進んでいるケースがほとんどのような気がします。

【卒後】
特別支援学校に通う保護者の方々は、子どもが安全に、元気に過ごすことができるように衣食住を整え、学校と付き合い、放課後活動や保護者同士の付き合いなどをしています。レスパイト(一時休止、休息)の機会としてショートステイを利用する場合もありますが、みんなが十分に利用できる状況ではないようです。(なかには、ミドルステイかロングステイかと思えるくらい、つないでつないで長くしていることもあります)

この状況でも、保護者が(比較的)若く、学校が日中子どもを受け入れている状況のうえに成り立っているのです。これが、学校を卒業して、保護者が60歳を過ぎて体力が衰えてきたらどうするか、です。

【大人になったこどもの生活】
綿先生(日本福祉大学教授)は日本肢体不自由協会の「はげみ」のなかで、「重度障害者の家族にとっての一番の不安は、子どもの親亡き後の生活です。これまでは家族を中心にケアや支援をしてきて、将来の子どもの生活が見えていない家族は非常に多くいます。」と書いていて、親亡き後の子どもたちの生活設計のために準備しておくものとして、「日中活動(通所事業所)」と「居住」と「後見」の三つを挙げています。これまで担ってきた保護者の役割を、社会に、他人にわたしていくことになるのです。

【先の生活を見据えて】
手厚い特別支援学校での支援があるうちは、学校にも個別に、保護者同様の支援をもとめて、あれこれと注文を出せていた生活も、生活介護事業ではマンパワーは4:1になり、就労継続支援Bでは10:1になり、やってもらうことから、集団のなかで生活するために自助努力や環境適応をすることが必要になります。

特別支援学校でも、卒後の生活を見据えてとは言いながらも、保護者からの「やってもらう支援」に対する要望が強く、個別に、丁寧が主流です。子どもや保護者の「してほしい」、「やだやだ」を乗り越えて、「この子の将来を考えて、これはやらなきゃ」と踏み込んでできる先生はどれくらいいるのでしょうか?

このへんは、「保護者の期待に応える」、「合意主義」の弊害かもしれないと思っています。

子どもがエラーを起こさない根回しやルールを、常に確認する。
輪を乱す行動でも、常に受け入れてなだめる。
個別指導中心で、集団指導の輪のなかに入れない。
保護者の言う通りに環境を整え、指導する。
つつがなく学校生活を送るために応えていますが、それで卒後の生活に向けて大丈夫といえるでしょうか?

具体的にこうしてください、と言われると、それがよほど理不尽なものでない限り、担任は言うことを聞きます。しかし、これらについて実施責任を負ったとしても、結果責任は負えないことを知って欲しいです。

【グループホームでの生活におけるコストバランス】
子離れ、親離れする1つの手段としてグループホームがあります。金額について地域差や支援内容によって違いますが、「はげみ」に収支が掲載されていたので、引用します。

収入は基礎年金、各種手当(国制度、都道府県、市町村それぞれ)、給与・工賃、家賃補助で19万9193円で、支出は食費、光熱費、家賃、嗜好品、福祉サービス利用料で16万円とありました。プラスなら黒字、マイナスなら赤字です。兄弟や親族のバックアップも大事みたいです。

これらを考えると、卒後は知識と人づくり、経済基盤づくりが重要だと思います。個別最適と学校は言いますが、これは保護者が選んで、決める内容だと思います。なぜなら、様々なサービスや人材を必要とするか、しないか、どれを選ぶかという個別選択が多種多様で提案しにくく、子どもの成長や保護者の生活状況によってニードが変化するので、それを追っていると、担任は授業準備や校務ができなくなってしまうからです。