担任の先生より

581)特別支援学校 ルールでかためるか、自由か

廊下をつんのめりながら走る生徒。
いつ転倒するか、誰かとぶつかるか、何かにぶつかるか、気が気ではありません。

少し課題を整理してみます。

周りをみていない。
スピード調節できない
こうなったらどうなるか、予見できていない。
前傾しながら、つま先に重心をかけて前方に突っ込むように進む。
止まれない。
通路の端によるなど、左右の位置関係を見ないで進む。
バランスを立て直すために手すりを使わない。
感覚遊びが多い。

この実態をみて、あなたは歩くことを推奨しますか?
昨年度、彼は教員をぶっちぎって、廊下を走り、追いかけられてはつかまっていました。
「子どもが主体的に活動することを尊重したい」ということだったそうです。

まず、多少間違いがあっても、とにかく課題(問題?)と思われることを箇条書きにしてみましょう。ここは医療系の実習レポートを書く場所ではありません。多少意味や言葉を取り違えていても大丈夫、いろいろな角度から物事をとらえることが大事です。

次に、列挙したもののなかで、これは教えてすぐになんとかなるものじゃない、機能的障害で指導によって改善するものではない、すぐにできるかも、練習したらできるかも、と考えながら指導として取り組めるテーマを探していきます。ちなみに、上記の①から⑧ですが、指導したらできそうなものはありますか?

私は④と⑦が一番日常的に取り組めて、改善が見込めるとふんで取り組みました。もし、これら2つが改善したら、8-2になります。少しできることが増えたら、他の課題にも手が届くような気がしますよね。

【自由の可否】
新しい移動方法や、提案できる活動があれば、まず安全を確保しながらやってみようということになります。そこから見える「できること」「むずかしいこと」はどれくらいありましたか?

できることがあっても、それを適切に使いこなせるでしょうか?安全面の課題を残すと思うなら手放しで喜べるものではありません。難しいことはどれくらいありましたか?あまりに課題が多いと、いくつかを介助等で軽減してあげないと、マルチタスクを子どもに課すことになります。

もし、その子が中学生や高校生になろうとする年齢なら、まずその年齢まで伸びなかった課題があると考えた方がいいかもしれません。成長のために練習よりも、実生活や今ある能力のなかでどのように活動するか、現実的な運用を意識した練習にシフトすべきだと思います。

【ルール】
「大人が決めたやり方をおしつける」

聞こえは悪いですが、歩くときはこのように支援する、と決めておけば、子どもは自分の与えられたテーマについて繰り返し、一貫性をもって取り組むことができます。自分以外の支援者がついたときも、「こうすればいい」とかかわり方を共有することができます。

そのため、ルールを決める時は支援する集団構成員の力量や運用の範囲を考えないと、絵に描いた餅になり、それぞれが勝手なことをして子どもが混乱することにつながります。このことがあるので、取り組む内容は誰でもできる内容で、シンプルなものが望ましいです。緻密なハンドリングなどは、まず定着しません。

【補足】
補足ですが、子どもによっては場所が変わったり、側にいる大人が変わったりすると、途端にできなくなることがあります。場所が変わると、ある活動を発動するきっかけが見えなくなったり、この場所でもやっていいことか判断がつかなくなったりすることが考えられます。人が変わったときについては、A先生はいいけれど、B先生はこの場で何を求めているんだろう?などとパターンに乗りきれない不安を抱えているかもしれません。

そんなときは、「できない」で片付けず、どんな条件がその子の「できる」・「できない」に影響したのか、様々な角度から考えて対応していくことが重要です。