医療的ケアとは、医療行為であった痰の吸引などについて、看護師等が実施するはずだがやむをえないとして教員やヘルパー(ケアワーカー)なども生活行為の一環として実施するようになったものです。
私は特別支援学校(当時は多くが養護学校)で実施されている様子をみて、「身体について知識が十分でない者がやっていいのか」、「実施時の事故に対応できる環境でないのに」と批判的に考えていました。
また、医療的ケアだけでなく、医療機関でない学校が重度の子どもを受け入れることについて、コストや現場への配慮を十分にしないのはどうかと思いますし、実施に向けて対応するのは当然、事故など何かあったらただではおかないという社会の冷たい目は教員の自尊心や公務員(public servant)としての責任感を傷つけていると思っています。
それでも、生きている物が共生するために必要なことであるとも考えますし、子どもや保護者中心というより、多くの人が共存して生きられる環境はどうやったらできるのかなと考えています。
【医療的ケアを必要とする子どもの担任】
肢体不自由の学部にいる先生が、医療的ケアを必要とする子どもの担任になった場合、3号研修なる医療的ケアに関する研修を受けることになります。この研修を経て、医師やら看護師やらのチェックと実地研修がオッケーになれば、医療的ケアの実施者になるのです。
実施者になるまで、どうやってのりきるの?と思いませんか?
3月中に次年度の人事が発表されて、慌てて3号研修を受けてですよ、その後子どもが登校するようになって、実地研修を何日かかける訳ですから、スムーズに始めるのは難しそうです。
始めるまでに、保護者が学校にきて待機する、看護師が代行する、あとはできるまで学校を休みにして待つ、という選択肢が考えられます。
【スタートしたら】
スタートしたら、「いつまでも保護者に来て頂くのは負担ですよね」、「あとは学校がしっかりやりますからー」などということで、それまでつないでいて下さった方々は軒並みフェードアウト。担任の先生、その子の健康管理の本丸を守れるのは、あなた1人です。
「あなたが休んだら、この子はどうすればいいんですか?」
言われないけれど、状況的にはそんな感じじゃないでしょうか。
となると、他の先生も研修を受けてよと思うでしょう。
しかし、受けるとなると、その分授業等に穴を開けることになるし、その先生の担当する子どもを誰が指導するの?という話にもなります。フォローできる体制を整えるとすれば早期にと考えますが、誰もがその年度に担当する学部や学級、子どもの実態を把握して運営していくのに多くのエネルギーを使っています。そこまでマンパワーを広げられるかは、学校の判断次第というところでしょう。
担任が不在になってもきちんとフォローできる体制が作られているかが大きいと思いますし、医療的ケアにかかわらず、あらゆるところで起きる指導上のニーズに応えられるキャパが欲しいと思います。また、医療的ケアは命に直結することもあり、そこに注意が向き過ぎて、同じ学級の他の子どもたちの指導が滞ることがないような環境を整えて欲しいと思います。