学校の文化 担任の先生より

600)特別支援学校 通常学校より、特別支援学校のほうが楽?

公立学校の教員がブラックということで、職業としての人気が下がっているというニュースをよく見ます。

そのなかで
「中学校は正規の仕事でない部活があって、教材研究ができず休日がない。」
「小学校は保護者からの要求やクレームが多い」
「できない教員は特別支援学校や特別支援学級にとばされる」
などの意見がでています。

【実際はどうなの?】
通常学校と特別支援学校、どっちが大変なの?と思いませんか?もし、近くに通常学校と特別支援学校の両方を経験した先生がいたとしても、その先生の経験だけでは十分でないと思います。

なぜなら

通常学校にはクレームのきつい保護者と、そうでない保護者がいる。
特別支援学校にもクレームのきつい保護者と、そうでない保護者がいる。
通常学校には指導するのに難しい児童生徒が存在しており、そうでない児童生徒もいる。
特別支援学校には指導するのに難しい児童生徒が存在しており、そうでない児童生徒もいる。

ということで、どんな学級を担当するかで、感じ方がまったく違うと思います
なので、すごく客観的に見れば「職場環境や、担当する学級によって違う」といえるでしょう。
しかし、そんな玉虫色の、誰にでも言えるような意見なんぞ、要らんわ!という気持ちも分かります。

なので、あえて言わせて頂きます。どっちかというと、「通常学校のほうが大変」だと思います。
理由はシンプルに、「気持ちを切り替える休みがない」からです。

しかし、だからといって、「ほらみろ!特支のほうがのんびりで、楽なんじゃねーか」と思われるのもシャクにさわります。なので、特別支援学校はそれはそれで厳しい面がありますよ、というのを一部御紹介させて頂きます。

【常時マルチタスク】
少し、事前に確認しておくことがあります。
特別支援学校では、担任のほかに組んで指導する教員や支援員さんのような人が混在しています。
子どもは医療的ケアだけでなく、転倒や転落、衝突などの事故を起こすリスクをもっています。
子どもは情報さえ与えておけば、それに応じて自分で行動する、ができないことが多いです。

他の先生のことは分かりません。なので、児童生徒が教室にいるときの、私の頭の中を少しお見せします。
教室にいるときは、様々な情報を同時に確認し、そのなかでどう行動するか、次の行動にうつるか、周りの人はうまく動いているか、常時頭を使っている感じです。

①目の前の子どもの指導、評価、内容調整、何から始めて何で終わるか考える。
②目の前以外の子どもがどうしているか確認、次に何をするよう設定するか計画する。
③介助員さん等に何を、どのようにするか考えて伝える。
④自分がMTの授業の準備
⑤この後の予定をふまえて準備する。
⑥学年集団全体の教員と児童生徒の組み合わせから、考えられる課題を埋める。

これらについて強弱の変化はあれども①②は固定で、それ以外もふまえて動いています。

通常学校より人数は少ないですが、1人ひとりにかける指導の質と労力はかなり高くなります。それほどしない、できない先生もいるでしょう。
しかし、効果的な指導、ネガティブなリスク回避をしながら学校生活をつくるなら、これくらいしないと難しいと思っています。

児童生徒が下校したら、スイッチがきれてしまいます。
後は事務仕事や会議があるので、別のモードで動きだします。
それらが終われば、もう学校のことは考えたくありません。
頭と身体を別のモードに切り替えないと、もちません。
それを考えると、より長い時間仕事に拘束される通常学校は大変だと思います。

400mを10本走るのと、10時間走るのではどっちをとる?という感じです。
私は、ヘトヘトになろうとも、時間限定で休める時間が見えるほう(400m)を選びます。
みなさんは、通常学校と特別支援学校、400mと10時間、どっちをとりますか?