担任の先生より

603)特別支援学校 スモールステップが成長を停滞させる(ことも)

学校では、スモールステップでだんだん高い目標に向けて学習を進めるという考え方があります。

算数:1が分かるところから、数唱ができ、合成分解ができ、足し算、引き算へとステップアップして、見えない数のxなんかがでてきたりします。
体育:寝返る、起き上る、よつばい…など、立位や歩行などです。

下位のスキルを基盤にして、だんだん高度なものへと目標を変えていきます。

【最近、気づいたこと】
最近、スモールステップでは、かえって子どもを混乱させるかもと思ったことがありました
それは、パターンでどうするか決めてしまう子どもを指導するときです。

この前あったのが、車椅子に座ることを学習してきた子どものケースです。
なんとなく座面がありそうなところで座ろうとするので、うまく座れずに尻もちをついてしまいそうです。
そこで、余所見せずに、自分でどこに座るか確かめながら座ることを指導しました。

その後、動詞一語で「すわる」と車椅子を指さすと、それを把握して座るようになりました。

私のなかでは、「座る」はあくまで動詞であって、どこに座るかは「指さし」で伝えることで知らせることができていると考えていました。実際、座る場面はもぞもぞ動くと転落しそうで危ないと判断していたので、通常の学習椅子をすすめることはありませんでした。このあたりから、その子にとっての「座る」は、イコール「車椅子に座る」になっていました。

ある日、車椅子が中途半端な位置にあり、そこまで誘導することが難しい状況でしたので、近くの学習椅子を指差して、「座る」と伝えると、わざわざ車椅子まで行き、ちょこんと座ってしまいました。

【座る、を様々な場面で使えるようにするために】
しばらく、「座る」は車椅子に座ることと認めて、他の椅子などに座りたいときは「いす」、「ここ」など指差しを使い、「腰をかける場所は車椅子だけでない」、「座るは様々なところで使われる言葉だ」と分かるように、繰り返し練習しました。

その結果、相変わらず「座る」は車椅子に座ることというパターンは主軸としてありながらも、指差しプラス「座る」と言う、言葉かけで「椅子」と単語で伝える、で他の場所にも座ることができるようになりました。

【どうすべきだった?】
結果論ですが、「くるまいす」と言って座る練習をすれば良かったのかも?と思うことがあります。それでも、これだと分かる言葉が核にあると落ち着くところがありますし、「聞いて、自分でやれた」という成功と自尊心の積み上げになる、とも考えられるので、そこはこだわらなくてもいいのかなと思います。

今回、改めて感じたことは、教えることには先があり、今の動きから発展的なモードに進めたいならゴールの場面で使う物品や言葉を早期に持ち出さないほうがいい場合があるということです。子どもが自分のなかで「これは、この場面で、こうすること」と固定化すると、そこから広げるのに苦労します。

今と次だけ見て指導すると、いくら内容が良くてもドン詰まりになることがあるので、きちんと目標とそこに至るまでの道筋を考えるのが大事です。子どもの特性や傾向が把握していれば、その道筋が妥当なものに近くなるので、途中で修正や停滞することが少なくなります。