先日、脳性麻痺(CP)と筋ジスの同じところと、違うところを医学モデルから介護現場の配慮事項までつなげて話をしてみました。英語が通じる海外の方が中心でしたので、語学的なストレスよりも、内容に集中できるようにとの配慮です。
もちろん、日本で働いている方たちなので、簡単な日本語で伝えられるプレゼンを用意していくつもりです。プレゼンの内容だけでなく、聞く人の成長もふまえて作られる学習、スリリングで面白いです。
【プレゼンでやったこと】
- 脳性麻痺と、筋ジストロフィーの違い
- 脳性麻痺について
- 筋ジストロフィーについて
- 介助をするときの留意点について
【作るうえで留意したこと】
まず、障害については基礎知識としてやってきているので、この場で時間を使ってやる必要はない。それでも、現場で仕事をしているうちに、切実な問題として「疾患特性や加齢等を含めて、どんなことに留意して、何を支援方法として選択したらいいんだ?」という素朴かつ非常に奥深い疑問がでたのですから、実習生の人が確かめてやってみる、机上でやったこととつながる、意味が分かる、というところまでこぎつけるにはどうすればいいんだろう…というところがポイントだと思いました。
やってあげてしまっては育たない。
釣り竿を渡して、丸投げするのも違うかな…。
【脳性麻痺と筋ジスの比較】
同じ点として選択したのは、「運動麻痺が主」であること、違う点として選択したのは「発症のタイミングが違うこと」でした。
示し方として、ベタですが脳から線をひき、腕を曲げるところまでを図示して、この流れをつくるなかで困難さがあります。→でも、疾患によって、どこが妨げられるのかが違うのです。と説明しました。脳性麻痺は中枢なので脳、筋ジストロフィーは筋肉、運動命令が伝わる過程に関する障害の例として、パーキンソン病を挙げてみました。
同じように見えて同じでない、もし違う点があるなら、それをどう意味づけて支援するか?という課題を投げたことになります。このへんはハイコンテクスト(深い忖度)を求めたところなので、気づく人は気づく、気づけなくてもよい、の感覚です。
発症のタイミングが違ってくることについて指摘したのは、産まれたときから麻痺があると、発達段階を経て学んでいく動きや感覚、さまざまな学習機会を得ることが少ないということです。スタンダードな当事者中心の介助が通用しないことがある理由の1つとして考えられるのではないか、と思います。
また、よく感じる点として、筋ジストロフィーの有無にかかわらず、中枢が弱いことが介助を難しくしていることにつながっていると考え、その点を図示しました。腕なら肩関節周囲、下肢なら股関節周囲、全体をみて腹筋群が弱いこと、これらの軸の弱さがダイナミックな動きを難しくさせているのではないか、と説明しました。
【例題】
脳性麻痺と筋ジストロフィーの利用者さんで、「書字を促すとき、どこを介助しますか?」という問題を出しました。手部ですか?肘ですか?という選択問題です。答えとして、運動のコントロールが難しくなる脳性麻痺の方には抹消(手)をサポートして動きの安定性を引き出すこと、中枢が弱くて腕の重さがネックになりがちなので、筋ジストロフィーの方には肘を支えて支援する、と説明しました。
疾患特性や医学情報と、学校や介護現場で行われる支援、これらをつなげた数や質で、その人の専門性があがっていくと思い、例題として出しました。
「支援をするとき、その支援に理由がある」
すべてにおいて理由がはっきりなければ、やってはいけない。そういう訳ではありません。
安全に、安定して支援できることは常時必要ですが、ここぞというときは理由が説明できる支援が大事。そこに到達できるまでの試行錯誤が許される現場であったらいいなーと思っています。