不定期ですが、老年期や身体障害の分野で働いている介護職の方に向けたオンライン研修を行っています。
それについて、参加者の力量がアップしてくるに従って、疑問が具体的になってきたことが悩みの種です。
何に困っているか分かり、どうにかしたいと思えるのは素晴らしいことです。
でも、でもですね、それはあなたの力量の問題でしょと言われたら、それまでなんですが、オンラインであるが故に対象者の状態が把握しにくく、どこが問題か検証しにくい訳です。また、問題点を深堀りしようにも評価する機会がありません。
助言・指導は簡潔で具体的なもの、というのは頭で分かっているのですが、出した答えが的を得ているか、日常を支援する方に合っているか、介護職のリーダーのOJT(現場の教育)をさしおいていいのか、などの不安があるので、なかなか言いにくい…。
また、これは学校でも気になっているのですが、具体的な方法を伝えると、すぐに対応できるのでスピード感があり、結果や成果がすぐわかる、困っている当事者の負担感が少なくて済みます。しかし、デメリットとして聞いた答えは、その対象者の、その場面に関する指導の方法論なので、人や課題が変わると、また相談して聞くことになります。
「自分で釣ってくるんじゃなく、食べたいときに口を開けて待つ」という感じです。相談される側は、相談を受けるたびにお金がでたり、頼りにされて嬉しいと思えたりするんでしょうけど、相談者の人を依存させて、力をつけていく機会を奪ってしまっていると思えてなりません。
【ローコンテクスト、明確な観点を列挙する】
的外れになるかもしれない、独りよがりな専門家の方法論よりも、どこを順番に確認していけば課題に行きつけるか分かる観点の提示のほうが有益だ。
そう考えて研修資料を作り始めました。例えば、座位が不安定です、と言われたら、「横に座る」、「テーブルを用意する」「背もたれを用意する」などの方法を伝えるのではなく、座位が不安定な人は、どこが不安定か、なぜ不安定か見る観点を提示するという具合です。
このときは、運動学の物体が安定する条件を列挙します。
- 支持基底面が広い
- 重心が低い
- 質量が高い(重たい)
- 分節性が少ない、など
に加えて、対象者の方の課題として想定できるものを加えてみます。そうすると、研修を聞いた人は、「自分が見ている人の、座りにくい理由は何だろう?」と示された観点を1つずつとりあげて、検証していくようになります。このプロセスをたどると、支援者自身が自分の力で対象者を見て分かるようになると思います。
中には、主体性が発揮しにくい人もいます。
「いくつか原因があると思うんだけど、まずはこんなことができるか確かめてみて」→結果を聞く。
「こんな原因も考えられるんだけど、これはどう?」→結果を聞く。
これを繰り返すことで、相談者と一緒に、だんだん課題の核心に迫っていくことができます。
【オンラインでなければ】
オンラインでなければ、相談者と一緒に見たり、検証したりすることができるでしょう。
- いくつか仮説をたてて、検証した結果、原因が分かった。
- こんな評価(アセスメント)を使って、こんな結果がでた。なので、原因はこれなんだ。
- 課題を軽減(克服)するため、ターゲットを明確にして取り組んでみる。
【依存させない】
研修で講師をすると、役に立ちたい、頼りにされたい欲求がムクムクと芽生えてきます。常に自分を介さないと物事が進まない状況は権利収入を得ているようですが、そのレベルから動けない退屈と付き合うことになります。
では、魚の釣り方を覚えたら、もう相談者は来なくなるのでしょうか?
それが結構来たりします。
レベルの高いことをするようになり、新たな疑問点にぶつかった。
自分でやってみたが、これでいいのか確認したい。
前の相談者に紹介されてきました。
情報をあげる・もらうの関係から、対話的に問題を解決するパートナーシップへの移行です。
これが充実したコンサルテーションや連携の形ではないかと思うのです。