特別支援学校には、「自立活動(じりつかつどう)」なるものがあります。
歩けたら自立、自分で食べたら自立に近づくなど、リハビリに近いことをするのかなという印象がありますが、いいところを突いていると思います。
定義などはググればでてきますし、解説などもあります。学校現場でどう捉えられているかについては、自立活動や特別支援学校との連携、専門性などの先行研究でいろいろと考察がでていますが、どんな観点があるかというと、「身体の動き」、「心理的な安定」、「環境の把握」、「人間関係の形成」、「コミュニケーション」、「心理的な安定」がでていたと思います。
特定の教科や観点にこだわらず、少し離れたところから児童生徒をみて、大枠から、小さいところから、できそうなことをサポートできるものと考えています。
【校内研究で自立活動を取り扱ったら】
自立活動の観点を、学校内の研究の中心に据えるとどうなるか?
児童生徒の問題点や学習の困難さは、何が原因なんだろうと考え、自立活動の観点のなかのどれに該当するか考える。次に、それをふまえた学習指導を考える流れにいきがちです。
どうしてもケースとしてピックアップされた子どもの心身の機能・構造を根拠に、支援の形を考える方向になると、前年度の研究をみて感じました。研究にあたって、どの授業にするかも問題で、「自立活動」の授業であれば、何を課題に選んでも対応できるのですが、国語などの教科になると、本来の教科の指導目標や型があり、そこに個のニーズを混ぜ込んでしまうと、どうも内容がぎこちないと感じます。
それとは異なり、「その子の特性に配慮した授業」にしたら、かなり分かりやすく、しっくりくる気がしました。駅に点字ブロックがある、矢印がでている、路線によって色を変える、電車が入る前に短い音楽とアナウンスが流れる、みたいなものです。「留意点」や「配慮点」として自立活動の観点を活用すると、違和感がかなり少なくなりました。
【個から集団へ】
「教師は授業で勝負する」、「個別から集団へ」
学校が集団の場であるかぎり、そこは当然考えることだと思います。校内研究においても、前年度に個のニーズ(自立活動を主眼においた)をもとに、支援を考え、授業をつくったので、今度は集団で考えましょうという話が出てきました。
これに対して、知的障害を主とする部門から反対の声が上がりました。
「なぜでしょう?」
それは、「負担が増えるから」でした。根拠のある授業をすることは教員の務めだろうが、研修は教員の仕事ですよ、そんな声が聞こえてきそうです。
しかし、ここは冷静になって、「自立活動を主眼に置いた校内研究」とはどうあるべきか考えると、そこには肢体不自由と知的障害の学部の違いが大きくかかわっているのではないかと思いました。
【肢体と知的の違い】
活動量=知的のほうが多い
集団としてのまとめやすさ=肢体(車いす利用の子が多く、スピードはゆっくりめ)
一回の身体的事故リスクの大きさ=平均的にみて肢体(命にかかわるものも)
個々の実態、配慮する障害の多様さ=知的
個々の実態の説明しやすさ=知的
最後の「個々の実態の説明しやすさ」ですが、肢体不自由の学部にいる子だと、関節や筋肉、呼吸など、数値にできるものが多いので、分かりやすいだろうと思われるでしょうが、私はそれでも肢体不自由の障がいをもつ子どものほうが説明しにくいと感じます。
なぜなら、動きやリアクションが少なく、小さい分、「何をもってそうなっているか」、心の動きや認知の状態や変化について、言葉で説明しにくいからです。どの場所で見られるか、どうすれば見られるか、どんな条件で見られるか、などの検証のための情報が十分集められないですし、体調などによって表出(動きを含む)が安定して出ないことも「これだ!」ととらえにくい一因です。
その反面、肢体不自由の学部では子どもの動きや配慮点が比較的少ないために、大枠を集団の特性として語ればいいので、前置きの説明は比較的容易です。場面設定や、学習内容、教材の提示など、公約数をとれば大外れは少ないです。
ところが、知的の学部になると、動く・動かない、他害あり・なし、遊出あり・なし、言葉をかければ動く・動かない、分かる・分からないなど、目に見えるだけでも変化が大きいです。このような彼らの実態を、自立活動の視点で「実態」として説明すると、指導計画や指導内容を考え、記述するまでに多くの子どもの実態を語らなければなりません。
【どうするの?】
私見ですが、まず、自立活動を主眼に説明する場合、特定の授業をもとに説明するには無理があると思います。もっと長い期間(登校から下校まで、1週間を通して)の間に、どんなペースで、どれだけのことをするのか列挙する研究はどうでしょう。(ただし、はじめはケース一人にして、じっくり考える)
これによって、知的障害の学部では安全で時間通りに学習させるための学級経営だけでなく、そのなかでできることは何だろうと考える機会になるでしょうし、肢体不自由の学部では、どこで、何について子どもに頑張ってもらうか決めることができますし、体力を使うところと休めるところのマネージメントがうまくできるようになると思います。