ヤフーニュースの記事を見ていると、学校現場の一端を公表することでブラックボックスだった職員室の環境が見えるようになって、良くも悪くも学校教育に対する関心を集めていると思います。
ただ、中には一方的な見解を述べられて、「ちょっと違うんじゃ…」なんてものもあります。今日は、「苦情対応歴30年のプロが語る『モンペの対応』のコツ トラブルが長引く原因は「教師や学校」にある」から、私見を述べてみます。
【引用】
(前略)
「保護者からの申し入れの多くは相談や提案だと思われるが、中にはイチャモンもあるだろう。しかし、申し入れの中身がどうであれ、対応に失敗すれば問題はこじれてしまう。多くの保護者問題を見聞きして、長引く例は決まって、逃げた教師と学校に原因がある。つまり、モンペは学校側の対応のミスによって生まれるものだと言える。」
(中略)
「「何が苦情の原因だと思いますか」という問いに対し、2009年版では「こちらの配慮不足」と回答した人の数が、8業種のうち「教育」が最下位だった。2019年版では、最下位は「行政」となったが、教育はそれに続き下から2番目。また、「いちゃもん」「クレーマー」を苦情の原因として回答した数も、行政が1番目、教育が2番目に多かった。つまり、ほかの業界に比べ、相手に非があると捉える傾向が高いのだ。 こうした公務員の苦情に対する感覚のズレ、いわばプライドの高さが、かつて「聖職者」として尊敬されていた教師の権威が失われてしまった状況とも重なり、モンペの増加を加速させてきたと筆者は考えている。」
(中略)
「学校側はこうした状況の変化を重く受け止めず、「児童生徒を預かっているのは学校なのだから、保護者が自分たちの考え方に同意するのは当然」だという態度を続けてしまい、保護者の不信感を募らせ、問題を大きくしてきたところがあると思う。」
(中略)
「苦情対応の研修が必要であるはずだが、不思議なことに教師がモンペについて学ぶ機会があるといった話は今もあまり聞こえてこない。モンペ対応で本業の時間を削られている教師も多いことだろう。働き方改革について真剣に考えるのであれば、教育委員会も保護者対応について学ぶ機会を設定すべきではないだろうか。」
(以下、略)
【誰なのか】
まず、気になったところは主語が誰か、という点です。教育委員会、学校、教員、これらはいずれも教育行政側のものとして、ひとくくりにされる傾向が強いと思います。前文では、それらの違いについて配慮して書かれているようですが、「それは教育委員会に言ってもなぁ…」、「それを教員に求めてもなぁ…」というのがよくあります。
ざっくり説明すると、教育委員会は基準に則って学校が適切に運営されるか管理、指示するところ(直接児童生徒の指導はしない)、学校は都道府県や区市町村が設置した、行政の箱(受け皿)、教員は行政からの指示を受けて児童生徒を教育する人(直接児童生徒の指導をする)、だと思われます。
なので、モンペと言われる保護者等が「教育委員会に言うわよ!」というのは、「親に言いつけて叱ってもらうわよ、あんたは怒られるだろうけど、それでもいいの?」とほぼ同義だと思います。これについて、学校側に改善または妥協の余地があれば、何らかの対応をするでしょう。しかし、教育委員会も、多少世間ズレした内容や矛盾する指示を学校に出しているので、それらに起因する要求を学校にもっていくと、「そもそも指示している内容がおかしい」ことを認めることや「基準を逸脱させることを認めるのはマズい」と判断するので、そこまで強く対応しないでしょう。
教員とひとくくりに言っても、児童生徒の指導をする立場(強い立場)、公共の福祉に属する奉仕者(中立または弱い立場)、学校の設置者と教育員会等に管理される学校の枠内で仕事をすることを求められる立場(委託されたような、当事者のようで当事者でない、弱い立場)が混在しています。それが、様々な教員の言動や行動に影響していると思われ、ときに見られる暴走や逸脱や融通の利かなさにつながっていると思われます。
【クレームの原因】
教員のクレーム対応について、個々にそのスキルが十分でないのは当たっているかもしれません。しかし、もっと重大なことは、「学校の職員である以上、学校のルールを逸脱する対応はできない」という点にあります。
学校は規格化された公共物で融通の利かない面と、公共の福祉としてタックスペイヤー(納税者)の期待に応えなければならない面があります。教員は一方を意識して対応して、結果がよくないと、教育委員会または保護者、ネットを含む社会から叩かれる可能性があるため、電話等をしながら「どちらから指摘されても不適切だ」とされない落としどころを考えています。(なので、対応が良くない面もある)
これらをふまえて、学校のクレーム対応がうまくない理由は、「教育行政がもつ、どちらともつかない極端さと、玉虫色的な曖昧さ」だと思います。
そりゃ、言う方もお店で値引きしてくれそうなら、あの手この手で交渉もしてくるでしょう。しかし、この店の値段はこれです! 値引きや交渉に応じますが、ここまでです!と明確にしていれば、それ以上は言ってこないと思います。個人商店や露天商なら値引きがあるかもと期待しますが、イオンやヨーカドーの食品売り場で値引きを考えません。学校のクレームに関する問題も、これと同じようなものと思います。