担任の先生より

933)特別支援学校 ダウン症のこどもたち

数人のダウン症の子供を担任しただけで「こんな感じ」とか、安易に言っていいのかと自重していたのですが、中間評価だと思って書いてみます。

【ダウン症とは】
知的障害の学部のなかで、20人の児童生徒がいたら、1人はいるみたいな感じです。ダウン症とは染色体異常のことですが、医学的な情報はググるか、小児発達の本を見ればすぐに分かります。

医学的情報はふんだんにありますが、それが学校という特別な、日常生活に近い営みのなかで、どんな影響を及ぼすのかという情報は、意外と少なかったです。たまに保護者のブログなどが散見されますが、視点が子どもに寄りすぎて、支援者として参考にしにくい印象がありました。

【一言で】
彼らの特性をふまえ、指導をするうえでどう?と言われると、「面白さと難しさの両極端がある」と思います。知的障害を指導する教員には、いくつかのタイプがあり、「ダウン症の子得意」「自閉傾向のある子得意」「偏りなくできる」「(知的の分野にいるのは)残念だけどセンスがちょっと…」にざっくり分けられると思います。ちなみに、私は「自閉傾向のある子得意」タイプに近いと自己分析しています。これを読んでいる方はどうでしょう?

【集団生活】
ダウン症の子の傾向として、集団生活は分かったとしても、行動は「個」なので、馴染みにくい傾向があると思います。基本的にガンコで、自分の思い通りのやり方で、展開で進まないと納得できない子が多い…。

教室を移動するとき、「次にやるのは水分摂取なので、これを済ませないと、次にいきません」みたいなことになり、教員や友達を待たせます。見通しの長さが長くなり、やると決めたことの順番をいれかえるなどができるようになれば、比較的適応できるのですが、そこに至るまでに時間がかかります(正論を一言伝えて済む話ではない)。

また、移動時などで「スタートはどこで、目的地がどこ」が分かると、マイペースで突っ走っていく、並ばずに目についたものに脱線することがありました。並んでいる友達と進路妨害だと突き飛ばすこともありました。

【表現力】
絵を描くのは好きな子が多かったです。ダンスを見てすぐ覚える能力は知的に高い子がよく発揮していました。こんな子は絵を描くときに模写するのが得意だったと思います。反対に、模写はしない、独自の色使いを徹底する、他の人の提案や指導は聞かないといった子もいました。自己表現の面だけ評価すれば「長けている」といえますが、他者の提案などを受け入れないので、もっている以上のスキルを獲得することが難しく、世界がなかなか広がらないといった課題もあります。

自分で考えて動く力があるので、他の子よりも「できる」ようですが、周囲との対話(自己修正や学習)を拒む傾向があるので、「伸びない」ことがよくあります。そのため、卒業式を迎える頃、いつの間にか総合的にみて、追い抜かれたのね…というケースがよくありました。

【運動】
体つきは少しぽちゃっとしていて、思春期以上になると、どんどん太ってくる傾向があります。身体機能的に瞬発力はありますが、持久力がやや劣り、好きなように走って、バテて動かなくなるケースが多かったです。

衝動性に加えて、「これをやったらどうなるか」が分かっていないことがあり、好き勝手にやりたがるケースがよくありました。頚椎の安定性が十分でないので、リスク管理の面から、「ハイ、どうぞ」とは言いにくい場面が多かったです。

【学校で指導するときにおさえること】
具体的にこれをしますと提示する。
具体的にこれは、〇〇だから、しませんと提示する。
やり方を例示、明示する。
物事を遂行する順番を提示する。
どこに座る、どこに並ぶか、随時提示する。

基準がなければ、ルールがないと判断して、勝手放題になることがよくあります。

何がよくて、何がいけないか説明しないまま行動させるのは、「好きに動いていいと許可することと同じです。好きにしていいと言いながら、後で「これはいけない」「これは、こうするの」と言っても、マイルールが発動されてしまった後なので、受け入れられないことが多いです。事後に強く指導すると、理不尽なダメ出しの連発になり、爆発する、または頑なになって耳を塞ぐことが増えるような気がします。

逆に、事前にやり方などの基準を明示していたのに、その通りにしなかったら、きちんと叱るべきです。「聞いていたのにやらなかった⇒怒られた⇒こうすべきだった⇒まる〇」がつながれば、そのように行動パターンが構築されてくるので、うまく周りと合わせて行動できた経験と学習を積むことができます。

間違ったときに指導しないと、独断専行を強化してしまいます。保護者の方で、望ましい行動様式や物事の順番を教えることができなくて、暴走を止められなくなっているケースがあると感じています。教員も「普通にしてください」、「ちゃんとやってください」と怒鳴るだけになっている場合があり、どちらもその点を理解していないか、それができないくらい余裕がないか、だと思います。