トイレにいったとき、ポケットにハンカチが入っていると、どのように出し入れするでしょうか。
取り出すときは、まずポケットの入り口を指先でたどって探り当て、指の背部でポケットの空間に指をすべりこませて、ぐりぐりを指をねじ込んでいきつつ、ハンカチの有無やつかみどころを確かめる、みたいな流れになります。
【トイレで手を拭く】
子どもたちの「手を拭く」ことについて、ポケットに手を入れたつもりが、指がひっかかっていて、十分に中まで手が入らないこと、いつまでも腰のところをなでてポケットを探り続ける、なんてことがあります。
そんなとき、目視を促します。
考えてみれば、ズボンのどこに、どんな角度で、どんな幅でポケットが存在しているなんて、日々の繰り返しで把握していくものだと思います。彼らは自分がもっている衣服の特徴を把握すること、衣服の一般的な特徴(ボタンやポケットの存在など)を知ること、自分の体の使い方と感覚刺激から環境を把握することが不足していると思います。
そのため、今ある状況のなかで、場当たり的な対応を求めたり、支援したりしながら、長期的に衣服の特徴を感覚的に把握して、使いこなせる経験を積ませています。
【想定範囲外】
彼は、ハンカチは右ポケットに入っていると信じているようです。右手をポケットに少しいれて、「ない」と答えます。私の上から見下ろした彼の左のポケットの中に、ズボンの色とは違う、白い布が見えていました。
私はそれがハンカチであることを知っているので、彼に尋ねてみました。
「本当にない?ハンカチ、ない?」
それを聞いて、彼は再び右のポケットに少し手を入れ、目視で一瞬確認して、「ない」と答えました。右のポケットには、奥まで手を入れた訳ではないので、本当にそこにないかどうか言いきれないのではないか、ポケットはそこ以外にもあるかもしれないと思わないのか?と思いました。
そこで、右のポケットについて、彼の申し出を信じるということで、こっちのポケット(左)にもない?と聞きましたが、左のポケットの存在を確認すること、手を入れて確認することはありませんでした。
「もう、無いと言ったらないんだ、私はそう決めたんだ」と言わんばかりの態度です。最後に、左のポケットからハンカチを取り出して、目の前に提示してきましたが、最後まで彼の主張は「ない」でした。
気づけなかったのが悔しくて、認められなかったのかと思ったりもしましたが、「ハンカチは右ポケットに入っている」、それがその時の彼の答えだったのでしょう。
そこで、「そうか、なかったか、じゃあ教室に戻ろう」と促しました。今さらですが、「分かる・分からない」「できる、できない」だけで終わらないこともあると確認させられました。