今後の幼児教育について、有識者が委員となって議論されました。
構成メンバーは大学の教授、園の理事長15名で、現役の保育士や教員の代表にあたる人はいませんでした。
以前から、有識者会議からいろいろ案が出されるのですが、課題を列挙し、そのために何が必要か提言するまでで、運用まで目が行き届いていないことが問題だと思っています。PDCAのうち、P(計画)とC(評価)が肥大化して、実際に教育や療育を行うDO(実施)をどうするかの視点がごっそり抜けています。
ここでは方針が出されているので、人的・物的・金銭的に加えて時間という資源については別問題です。Pは計画ということで、現場の先生や保育士さんなどが立てるものですが、かなり制限がかかっているので自由度はあまりなく、自己犠牲なしでは充分なものはできないと思います。
ここで重点的に検討されたのが、幼児教育と小学校教育との円滑な接続です。
【委員の意見】
・現状でも、3要領・指針や小学校学習指導要領等において、資源・能力や学びの連続性が図られていることを知らない人が多いと思われるため、一層の普及啓発が必要。(⇒知ることで現状の課題が解決するか、誰が知らないのか、誰が誰に普及啓発するのか。自分たちは大事なことを言っている、それを聞かない・知らない人がいるのが悪いと思っているのだろうか)
・幼児教育施設と小学校の管理職や教師・保育士の両者が連携への意識をもち、互いを見合うようになることが重要。(決められた教育的資源のなかで、指導要領等の枠組みを守り、学級や学年の枠組みを守ることにエネルギーの大半を費やしているなか、見るというタスクを増やすだけになるのでは)
・一部の幼児教育施設においては、子供の興味・関心を踏まえず、単に小学校の学習を前倒しするだけの一方的な指導が行われている例もあり、かえって子供の興味・関心の芽を摘み、小学校における学習の妨げになっているという問題もある。(小学校の指導内容や環境の変化が厳しいと捉えており、その準備をしているとするならば、教科学習に向けての円滑な接続の取り組みのひとつともとれる。)
・保護者においては、小学校に備えて表面的に先取りすることで安心したいという向きもあるため、幼児期にふさわしい教育の在り方について保護者に対する一層の普及啓発が重要。(特定の保護者の意見に振り回され、何かあるとすぐに謝罪会見を開いているような実情では、現場が保護者にひきずられるのも仕方ない。この小学校ではこの方針でいきます!という強いメッセージを発しない限り難しい。)
・小学校以降における不登校やいじめの問題について、幼保小接続の観点からしっかりと考えていくことが重要。(誰が考える?)
【思う事】
ここでは、「小学校への入学状況が多様であることも考慮」と書かれており、①国立・公立幼稚園、②私立幼稚園、③公立認定こども園、④私立認定こども園、⑤公立保育園、⑥私立保育園が列挙されています。地域にある就学前施設が多様であればあるほど、連携に向けたパズルは複雑になっているといっていいでしょう。他の国や地域からの転入・転出があったら、もっと複雑になります。
就学前施設は、管轄の違い(文科省、厚労省、区市町村等)と、施設の目的や設置者の教育理念によって個々に運営されています。そのため、多少配慮することはできても、大きくは変えられないと思います。
一方、小学校は地域の子どもたちを取りまとめ、1つの集団にする作業が待っており、不登校やいじめの問題が表面化している現場でもあり、立場的には厳しいといえます。
本有識者会議では「遊びは学び 学びは遊び やってみたいが学びの芽」という標語みたいなものがでています。これだけを見て、そうだよなぁと思ったりもするのですが、実際をそれを仕事として重点的に取り組む立場になったらどうでしょうか?
これらをもとに考えると、最も大きい影響を受けるのが小学校教員だと思います。
・これまで通り、学習指導要領に則って、指導計画と指導目標、成果を出してください。
・成績は「~できた」と書きます、「楽しんだ」「取り組んだ」はダメですよ。
・保護者の意見を取り入れながら、よりよい指導を目指しましょう。
・遊びのための教材や環境づくりは専門性向上のために有意義です。他の授業もしっかりね。
・授業時数は、不足がないよう適切に管理し、守ってくださいね。
・特別な予算は出さないよ。教員の定数も現状で工夫しなさい。
・幼稚園等との円滑な接続を意識するため、幼稚園等への見学をしてください。
・幼稚園等から小学校へのスムーズな移行が図られればいじめや不登校は減るはずだよね?
【最後に】
こういった就学前施設との連携や情報交換は、特別支援学校にも小学部があるだけに、以前から小さいながらも行われてきました。取り組みが義務化すると、必要に応じて、適宜という訳にはいかなくなり、日を設定して、計画書を作り報告する、といったフォーマルなものとなり、学校全体のタスクが増大することになります。
学校に関する有識者会議などはいろいろなところで行われ、いじめがあればいじめの対応、教科指導の問題があれば学力向上に向けてと教員の資質向上について、特別支援があれば特別支援に関する取り組み、いろいろな観点が次々と教育委員会経由で学校におりてきて、混ぜ合わせて足し合わせる作業が長年続いています。
子どもの課題が顕在化するたびに、小学校にかかる負荷が増大していくのではないかと危惧しています。それを反映してか、小学校の教員不足も深刻化していて、こどもの教育はどこに向かっていくのでしょう?