「令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」(令和6年8月中央教育審議会答申)を踏まえて、「教師を取り巻く環境整備 総合推進パッケージ」なるものを考えたそうです。
業務負担と長時間勤務を減らします
ということで、①学校における働き方改革を一層進めます、②専門職にふさわしい処遇を実現します、③教職員定数の改善等により、指導・運営体制を充実させます、という大枠で、いろいろ挙げられていました。
【個人的に注目したところ】
①健康・福祉の確保及び柔軟な働き方の推進
ストレスチェックの実施や産業医の選任、衛生委員会の設置等に向けた都道府県等への周知徹底と、勤務時間について挙げられていますが、「なぜ、教員のストレスが増大したか」に対する答えが見当たらず、このままやっていくなかで、コケそうな人が出たら対応するだけなのかなという感があります。
勤務時間についても、やっている仕事の処理能力を高めること、協力してすすめることが前面に出てくるのですが、課せられた様々なタスクをどれだけ減らして、授業力を追求する時間と余力をどれだけ確保するかが大事だと思います。もちろん、経験年数の浅い教員ばかりでなく、総じて授業検討や児童生徒指導について話し合えるだけのベテラン勢の余力も必要です。
②教職員定数の改善
今、教員に課せられたタスクがそのまま継続されるなら、教員の数を増やすことが大事だと言われるのでしょうが、教員に課せられるものが40年前に戻るなら、増やさなくてもいいんじゃないかと思えます。子どもの指導にかかわる困難さは大人の労働環境や経済的な問題に関するものが多く、厚生労働省に頑張ってもらわないと、どうしようもなくて、最後にでてくる困難さの尻ぬぐいを教員が背負っているみたいです。
心理・福祉等の高い専門性を持つ者の教員免許の取得促進や、特別免許状を活用した優れた知識経験を有する社会人の入職促進も挙げられていましたが、自立活動の教員免許状が取得できる認定試験は縮小傾向で、外部との連携にシフトしたと思っていましたが、再び他職種の専門性を校内に取り込む方針にシフトしたのでしょうか。どちらかというと、特別免許状を発行して、当面の担任不足の解消を図ろうとしていて、特別免許状の有効期限(5年~10年)があるだけに正採用である教諭になれず、安定した雇用が期待できないのではと危惧しています。
OTから教諭になって20年ほどになり、課されたタスクをこなすうちに、校内の教員がやってきた「指導方法」と「経験則」に依存した指導は少しずつ変わってきたと思います。医療分野の特性や専門性は時に便利に使い捨てられ、時に客寄せパンダのように前面に出る「特別なもの」扱いでしたが、そんなものに依存せず、教員それぞれの教育観を信じ、それを磨けるようになるには、どれだけの時間が必要なのでしょう。このペースでいくと、それを見ないまま終わってしまいそうな気がします。
「教育委員会や地域住民、保護者を含む社会全体で学校や教員を支え、教員の働きやすさと働きがいを両立するため、協力をお願いしたい」と文科省大臣は言っていましたが、学校を使って教育行政の有用さをアピールしてきた経緯があるし、歴代の保護者は子どもを通じて様々なニードや行政への不満を学校にぶつけてきた経緯があります。学校はどこまでをするところだと線引きをすること、行政として学校が担ってきたことを「ここ」でやりますと受け皿を明確にすることがないと、他力本願な愚痴だけになってしまいますね。