学校の文化 担任の先生より OT・PT・ST

271)リハビリの臨床実習で活用するコーチング ~作業療法臨床実習の手引き(2018)~より

【コーチングとティーチング】
私もコーチングを受けていて、「作業療法臨床実習の手引き(2018)」のなかで臨床実習におけるコーチングの活用について(pp.35)書かれているのをみて「お!」と思って読んでみました。

コーチングとは、「お互いアイデアを出し合い、検討し、行動に移すためのアイデアも双方向で生み出すコミュニケーション」で、臨床実習でも指導者と学生さんが双方向から考えを出し合い、学生さんのアイデアを引き出すことになります。
 有効なときとして、「すでに本人の中にあるものを引き出したいとき、やりたいことを明確にするとき、本人の中にある情報や考え方にアクセスしたいとき」が挙げられています。

ティーチングとは、「自分が持っている知識、技術、経験などを相手に伝えること」で、指導者からの一方通行であり、アイデアを学生さんに伝えることになります。
 有効なときとして、「緊急性が高いとき、基礎的な知識を教えるとき、ルールを徹底させるとき」が挙げられています。

【コーチングの構造(GROWモデル)】

G(Goal):目標を明確にする

R(reality):現状を把握する

R(Resource):資源を発見する

O(Options):選択肢や方法を考える

W(Will):意思を確認する

【特別支援学校で行うコーチング】
コーチングは主体が実習生自身で、実習生が自分で考えることを尊重します。
臨床実習では、学生さんは知識の引き出しが整理されていないまま実習地に足を踏み入れることが多いと思われ、指導者から通常の問いかけがあるだけでもプレッシャーになることがあるのかなと思います。

 知識のどの引き出しを開けるか、学校では調べるか手がかりが記載されているカルテはなく、個人情報として厳重に管理されています。
 なので、学校の文化的背景を説明しつつ、場にふさわしい選択肢、条件を提示して考えさせることでコーチングをすすめていくことが必要だと思います。

 一方、ティーチングは指導者がある一定の権威をもっているが故に、指導者の考え方の枠に実習生を閉じ込めてしまうかもしれません。
そのため、指導者自身も何を選択し、どんな留意事項を守って授業や支援を行ったか説明する必要があり、W(意思を確認すること)によって指導者を真似るか、別の可能性を探るか、などの選択肢が与えられるべきだと思います。

【教育実習と臨床実習の差別化】
コーチングとティーチングをふまえた実習生の指導を行うと、学校で行われる教育実習と進め方はほとんど同じになってしまいます。

 差別化を図るなら、見えたものをふまえて指導方法を考える教員の考え方の流れではなく、医学的根拠(理由付け)や検査などの手続きを適宜いれることで、活動の質と量の調節、リスク管理、発達を促すポイントを見つけて提案する、などができたらと思います。

【臨床実習の指導をすることになったら】
臨床実習指導者の研修はなぜか人気があり、なかなかとれないのですが、やっと私も受けられるようになりました。私も職場環境に慣れてきたら学校の管理職と相談のうえ、一緒に学べる学生さんを受け入れてみたいと思っています。

 特別支援教育はリハビリテーション業界と距離が近くなってきています。

しかし、その一方で「学校文化」や「連携の難しさ」があって敬遠されていること、もともと発達障害(子ども)分野のリハビリテーション技士の数が少ないことから、とりかかりにくいということを承知しています。

 そのため、現役のリハビリテーション技士にだけでなく、学生時代から地域の1つとして特別支援学校で実習するのも悪くないのではと思うのです。

https://magomago1.org/270whichisdifficultteacherorcareworker202011/
前回は、「270)介護と学校教員、新人からすると、どっちの職場が厳しいか」でした。みなさんはどっちが難しいと思われますか?

https://magomago1.org/272makingvoicemakeyouandhimhappy202011/
次回は、特別支援学校と介護現場共通の介助についてです。「272)特別支援学校や介護現場 介助のとき言葉をかけるのには、大きなメリットがあります」というタイトルで書きました。