特別支援学校に入学するには、前年度から就学に向けていろいろな話し合いを経ていきます。
そうして、「肢体不自由特別支援学校が適当である」などと書かれた書類が発行されます。
しかし、就学は措置ではないので、保護者がいろいろな理由で「こっちの学校がいい」となれば、そこに行けるか調べ、環境を整えられるか確認することになります。
【肢体不自由特別支援学校に入学】
肢体不自由特別支援学校に入学という場合ですが、いくつか理由があるようです。
①歩くことが難しく、車椅子を使用すること多いため。
②足首つっぱらせて歩くので、動きに課題がある。
③肢体不自由の学校のほうが教員と子どもの数を見ると、手厚い指導が受けられそうだ。
④通学で通いやすい学校はここだから(居住地による学校選択)
⑤医療的ケアを希望するので、その対応をしてくれるところ、医療機関との連携が密のほうが安心。
などがあります。
【指導の枠組み】
教員の数、子どもの数の比率は知的障害部門より手厚いことが多いです。
例えば、肢体不自由の学校だと
大人2人:子ども2人、などがあります。
知的の学校だと
大人1人:子ども3人
大人1人:子ども6人、などがあります。
あとは、学内調整で学級ごとに、何人プラスされるか、です。
【学校でどのように過ごすか】
例えば、下肢に少しの痙性があり、軽度の知的障害がある子どもが肢体不自由特別支援学校に入学したらどうなるか、例を挙げて考えてみたいと思います。
入学したのは2名で、男子1人、女子1人で、男子は身体的には軽度、女子は車椅子を利用としたら、活動のリーダー格は男子になることが多く、彼を主軸にして学習が展開していくでしょう。
反対に、役割交代が行われた場合は「待つ」ことが求められます。
学級として活動するときはエースですが、それ以外は学習内容が異なるため、彼は大人との個別学習が増えると思われます。そのため、集団で学びあうという活動が減り、教員の目が行き届くクローズな環境で学習が進むことになると思われます。
【見えてくる課題】
男子にとって、担任にとって、課題がいくつかあります。
男子について、エース格で学習することが多いため、自己有能感が高まり、手厚く勉強できるために個の状態に応じた学習が期待されます。しかし、肢体不自由特別支援学校に在籍すると、先頭にたつことはあっても、子どもの集団に参加するためにひっぱられる、目線を高くして求めていく機会が不足します。それは将来的にネガティブに働くことはないでしょうか。また、手厚い環境は必ずしもいい訳ではなく、教員と共依存的になるかもしれません。ずっと見られているので、気が休まらないかもしれません。
教員にとって、マンツーマンの指導になると、複数の子どもを同時に指導する困難さは少なくなると思います。しかし、普段他の教員が介入しないので、担任の先生が休んだらどうするか対策を練っておく必要があります。また、小学部、中学部などに在籍していることから、その子だけ見ていればいいという訳にはいきません。担任する男子、同じ学級にいる女子、他学年の教員や児童生徒にも目を配らなければなりません。それだけに、軽度の子どもから重度の子どもまで、幅広い指導が必要になります。
学級の男子について、支援者同士で話す時、「その男子がどうか、どうするか」が話題になりますが、担任の先生が他の子どもや授業の実施等も含めたマルチタスクを求められているとしたら、周囲が感じているほど余力がありません。
「男子の障害は軽い、だからもっとできるはずだ。」
「担任の先生は指導体制的に恵まれているのだから、もっと頑張れ」
「1人しかみていないのだから、もっとできるはずだ。」
これを言う前に、子どもや担任の先生がいるところはどんなところか、どんな状態か、もっとよく見て欲しいと思います。
https://magomago1.org/441therearemanybeliefhowtoeducate202107/
前回は「441)図画工作 教え方はいろいろ、学ぶ側の思考もいろいろ」でした。