特別支援学校では、保護者との連携が重視されています。
栃木県教育委員会が出した冊子では保護者に接する基本的な姿勢について、以下のように示されています。
①共に子どもを育てるという姿勢
②誠意をもった対応
③誠意をもった発言
④立場の異なる教育観の理解
⑤親の努力への理解
⑥不安感の排除
⑦なれ合いと迎合の回避
これを読んでいる方は、特に何番が大事と思われるでしょうか?私は1つひとつ読んでみて、①と⑦が大事だと思っています。なぜなら、教員と保護者は立ち位置も役割も異なると考えているからです。それぞれが、それぞれの価値観や責任の範疇でできることをする、不足すれば努力するか、他に支援を求めるか、諦めや妥協すれば良いと思うのです。
では、②と③はどうでしょう?「誠意」とは何でしょうか?具体的なことを言うと恐喝になるので、「誠意を見せろや」とすごむ場面を見たことがありますが、誠意とは示す側、受け取る側によって意味や解釈が変わるのです。いくら保護者のためになると考えてお膳立てしても、足りない、違うと批判を浴びることがあるのはよくあることです。
④は、一緒に子どもを育てるのだから、同じことをしろと思ったりしない、できる範囲でできることを忘れないでいれば、強いてとりあげるものでもないと思っています。
⑤は、傾きすぎると、「保護者は忙しいのだから、あれこれ学校から依頼してはいけない、自分の方でやってあげよう」と教員がボランティアになって、本来保護者がなすべきことをしない、これが今と将来に必要な手続きをする経験と機会を奪うことにつながります。実は、今私もこれにハマっていて、「以前の担任はやってくれていた、なんで私がやらなければならないんだ。」とクレームを受けています。他の保護者が自分でやるという基本ルール、やってあげて保護者が満足する過剰サービス、どちらに合わせればいいか担任として悩ましいところです。
⑥は、不透明で見通しのたたない現代、私も不安です。不安感を排除するとか、神様でしょうか。具体的な課題や問題があるなら、原因と解法を突き止めて手をうっていくだけです。不安感を解消するのは当事者の気持ち次第です。
⑦の「なれ合いと迎合」、これは学校語で訳すと、「信頼関係」と呼ばれることが多いと感じます。
「やってあげて喜ばれ、信頼関係が深まった」、「子どものことを気にかけているアピール」、これらは必要に応じてやると気の利いた配慮になりますが、日常的にやってしまうと周囲とのバランスがとれなくなる、他の人が入れなくなるくらい近い距離になってしまうので、本当にやってもらいやいことがあっても声がかけられなくなる、などの問題が起こってきます。
【信頼は何で積みあがるか】
学校での営みを、しっかりやることだと思います。
どんな風に過ごしているか伝える、場面ごとに何を期待しているか伝える、できたことを喜ぶ、学校の中で発見した子どもの変化を伝える、どんなことを大事に指導しているか伝える、子どものことで「なんでだろう?」と思ったことを共有する、このような対話や実践の積み重ねが信頼関係につながると思っています。
何でもやって差し上げて、喜ばれることが信頼関係につながると思い込むのはナンセンスだと思います。それは、ただのサービスの安売りです。「これだけやってあげても、足りないと文句ばかり言われる」、「保護者に媚びることが日常化している」、そんなときは、先生の指導観を見直す、本来教員としてどうあるべきか基準を確認する、どんな環境が子どもにとって必要か考えなおす、このように地に足がついているか確認することが改善につながると思います。