摂食指導について、昨年の指導がどのような経過で成立したかという疑問に対して、「それは、どこに記録があるか…?」、「たぶん、保健関係のフォルダにあると思う。」などと返ってきました。
これまで、子ども1人ひとりについて、担任を中心に指導体制や指導の方針をまとめていくにはどうするか、について考えてきました。しかし、新しい担任の先生に変わってから学校生活が安定するのに時間がかかりすぎることについて、十分に考えてこなかったと思います。
引継ぎについて、私は「自分で見て確かめていないことは確かでない」と考えて、自分で評価し、自分で優先順位を決め、自分で計画した流れで学校生活をデザインしてきました。しかし、それは少人数の学級だからこそできることです。大人数の集団になると、自分が担当する学級の子どもだけ指導する訳にはいきません。他の学級の子どもも含めて、その場その場でとれる安全で効果的な指導ができる指導体制を作ることが必要になるので、要点をおさえて指導することが求められます。
【学校は質と量の指導が入り混じる空間】
そのとき、質の高い個別指導(質的に高い、個別のリハのようなかかわり)と、複数の子どもにかかわりながら、いかに無為に過ごさず一緒にいるかという指導を組み合わせることです。
質の高い個別指導は授業での積み重ねのなかでできあがった指導であり、様々な専門家が提案してきた指導になります。また、一緒にいるために提案できる指導は、誰でもでき、誰がやっても効果的なもので、必ずしも個別対応でなくていい、日常的な営みのなかで見つかった過ごし方(人間関係や個人的な価値観で構築されたもの)だと思います。
【新しく担任になった。学校生活を構築する手がかりは?】
新年度に入り、担任の先生に与えられる前年度の情報は、パソコン内のフォルダを探ることと、前任者から話を聞くことくらいしか方法がありません。もし、前任者が異動などでいなくなったり、他の部署に行ったりしたときは、日常的なフォローは期待できません。
とりあえず、パソコン内を探ってみると、子どもの情報は様々な部署で管理され、日常的な過ごし方がイメージできるものは、ほとんどありませんでした。例えば、給食の指導は保健関係のフォルダにあり、専門家の意見は支援部にあり、通学については生活指導部、教育課程に関するものは教務など、観点別に縦割り的に情報がおさまっていました。担任の記録は指導方法が羅列されていますが、そこに至った経過が分からないので、指導方法を素直に信じていいものか判断しにくいものでした。
【年度ごとに全く同じか、全く違う】
また、パソコン内のデータは年度別に整理されており、順にみると内容がほとんど同じで、何か事情でもあるのだろうか?と勘繰りたくなるものがありました。また、反対に何があったと思うほどにブレまくった指導目標があると、この子どもはどこに向かっているんだろう?と思うようなものもありました。
【新しい担任の先生が欲しいもの】
新しい担任の先生は、子どものことが分かり、まずはどのように学校生活のレールにのせるかが大事になります。そのため、部署ごとにおさまった情報を取り出し、内容を把握し、今の学校生活のなかでどのように活かすか吟味する時間はありません。実際、私もいろんな情報を集めて、理想像に近いものを並べたことがありますが、学年全体の運営(集団指導)にそぐわないので、優先順位が高いものを捨てて、第四候補くらいの指導に入れかえたことがあります。
とにかく、与えられたマンパワーでできることが知りたいのです。それをまとめることができるのは、同じく集団の指導のなかで一緒にその子どもと過ごしてきた担任の先生しかありません。朝、登校してきてから、何に注意して、どのように支援するか、それが終わったらどうするか、一日の中でやっておかなければならないことは何で、それをどのタイミングで行ったか、などです。
ツアーガイドのように一日の流れが分かり、必要なときは各部署がもつ詳細な情報と照会して把握できるような児童生徒の情報管理・情報伝達が必要だと思いました。学校ごとに、教員ごとに引継ぎの方法は違います。まずは実態と課題、それを受けてどのような指導観をもって何をしてきたか伝え、新担任が軌道にのってきたら、その先生らしい指導が展開できるような土台を作る、そんな気概をもって引継ぎ資料等をつくって欲しいと思います。