夜、ひとりでぼーっとしていて、定年後はどうしようかなー、これまで何をしてきたかなー、などと考えていたら、ある児童のことが思い出されました。
もう、高等部を卒業しているはずです。
当時彼は小学部の5年生、頭を保護するためのヘッドギアをつけていました。
移動は寝返り、起き上り、膝立ち、よつばい移動はできますが、立ち上がりや立位保持が難しかったです。
股関節や膝関節がぴんと伸びなくて、内股になる傾向が強かったです。
その子が、ベンチに座るのがこわい、こわいと言って、ベンチ座位を拒否しました。
【生活環境】
自分で立位までいかない、いけない、後先考えずにイタズラをするような子どもは車椅子に座っている、床の上にいることが多いです。
つまり、自分でバランスをとり、重心を高いところでキープしながら過ごした経験が少ないのです。
床の上なら、多少転げようが転落はないし、足やお尻、手をついたりできるので安心です。車椅子にベルトをつけてもらえば、上体を支えてくれるので安心して車輪を回して移動できますし、両手をバタバタさせても倒れることがありません。
そんな子が、ベンチで座ることになりました。
支持面は狭いし、腰から上を支えてくれるものは何もありません。
どこを軸にして座ればいいんだ?もう大パニックです。
【見たことがある光景】
やり方さえ分かればできそうなのに、今はできない。
この状況は身体障害分野にいたときに何度も見た状況です。
片麻痺になった患者さんは、非麻痺側を使えば座位がとれるよう練習するのですが、ボディイメージを含む感覚や、どこで身体を支えたらいいか分からない運動面への不安から、当初はうまくできないことが多いです。
「同じやり方をすればできるかも?」
まず、ベンチ座位のまま、もたれる、押す練習をしました。
力の入れ方や、重心キープの加減が見えてきたら、少しずつ支えてあげる割合を減らしていきます。
安全と思われるベッドに寝ては起き上る練習を繰り返したりしました。
「怖がらず、ベンチ座位ができるようになりました。」
【同じ人です】
身体障害、発達障害、老年期、精神障害、それぞれ病名は違いますし、病院などの環境も違います。
その患者さんをとりまく人々(支援者の専門性や考え方)も違います。
そのため、分野が違うと全く別世界のように思われることもありますが、そこは同じ人です。分野違いでも、基本的な人間の運動や認知面、感情などへのアプローチや配慮は意外と似ていたりしますし、自分の持っているベタだと思っていた知識・技能が新しい風となってその分野で輝くことがあります。