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87)職場で会った得意先のおじさん ~作業療法への誘い~

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は昔話を一つしようと思います。
もうかなり前のことですが、大学を卒業した私はある問屋で働いていました。 問屋という言葉は、今ではあまり使われていない気がするので補足説明すると、 仲買(なかがい)のことで、製造会社から町のお店屋さんの間に入る業者を指します。


「にいちゃん、ちょっとこれ車につんでくれるか?」

瓶ビールのケース

人懐っこいような、それでいて意思の強さを感じる言葉掛けに振りかえると、 得意先のおじさんが立っていました。

彼の右腕は肘から先がありませんでした。

なぜそうなったのか、何だか聞いてはいけないような気がしていましたが、 とにかく片手が使えないから困っていることは分かっていたので、 軽トラの荷台に荷物を積み込みました。 彼は左手一本と、両足を駆使して、軽トラを動かして、倉庫から去っていきました。

軽トラ

ある日のこと、職場の古株と、得意先のおじさんが談笑していたので、 いきがかりで一緒に話を聞いていました。 そのうち、右腕の話がでてきて、おじさんは昔の話をし始めたのです。

「これ(右腕)はな、ワシが車で高速道路を走ってたんよ、そうしたら なんだか気持ち悪くなってきて、吐き気がでてきてどうしようもなくなった。 これはまずいと車を停めようと思ったら、右手がなかった。

どうも、対向車とすれちがったときに飛ばされたんだろうと思うけど、 どうもならんので、病院に行った。 腕は、犬か何かがもっていったのかもしれん。なかったわ。」

よくトラックに乗っている人で、左手にハンドル、右手は窓から出している人を 見たことがあるかもしれません。彼も、当時そうしていたのです。 スピードがでている車同士がすれ違うと、気が付かないほど一瞬で腕がもっていかれる なんて考えてもみませんでした。

この会社には5年ほどいましたが、もし当時リハビリテーションのことを知っていたら、 断端の皮膚感覚や、幻肢痛、重心のズレ、日常生活動作などについて知りたくなったかもしれません。

昔は人間が機械を動かし、ロボットではなく人間が工業機械を操作していました。 そこには現在のようなリスク管理という言葉はなく、「うまく、言われた通りやれ。」の世界でした。 人間は泥臭く、人情溢れる空間で、強く生きていました。 そんな時代の話です。

http://magomago1.org/schoolstaffmistake202003/
前回は、「86)教職員の服務事故について」でした。

http://magomago1.org/whyserioustherapistworryaboutcooperation202003/
次は、「88)真面目な専門家ほど、連携が難しくなるのはなぜ~特別支援教育と作業療法について考える~」です。

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