学校の文化 OT・PT・ST

38)「学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状と展望」を受けて

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、「学校保健・特別支援教育分野における理学療法の現状と展望」という、理学療法学第45巻第2号に掲載されていた講座から、理学療法の分野から、学校教育はどのように捉えられているか斬り…いやいや、見てみたいと思います。

ここでは、理学療法分野の方が、職域の拡大の可能性として、学校保健分野特別支援教育分野の二つを取りあげています。

【学校保健分野】
学校保健分野について、平成28(2016)年の4月1日から学校定期健診に運動器検診の項目が付加されさたことを受けて、介入支援の可能性はないか、と考えているようです。
学校保健における理学療法支援モデルの定義として、「学校において、児童生徒等の健康の保持増進を図り、学校教育活動に必要な健康や安全へんも配慮を行うとともに、自己や他者の健康の保持増進を図ることができるような能力の育成を支援すること」としています。

【学校保健分野について、具体的な介入案】
①部活動などの障害予防
②教職員も含めた学校全体の健康増進

【学校保健分野に介入するために】
①教員免許を取得する
②学校保健に求められる課題に理学療法士が解決できることを認知してもらう。

これについて、まず保健室業務に介入することになりますが、検診の一項目に運動器が入ったから といって、人員を増員することは考えにくいです。
現場レベルでは目安になる検査項目を増やすだけで、これまで通りの流れを大きく崩さずに検診等を実施すると思います。 運動器の評価が大がかりになりそうな場合、体育科の教員や体育の授業の一部を動員して対応すると思われます。  

次に、部活の指導ですが、昨今の教員の働き方改革の流れを受けて、中学校の教員にかかる過剰な負担を軽減するために予算が組まれる可能性があります。が、理学療法士として、午後4時頃から午後7時くらいまでの短時間の雇用に、どれだけの人数が動員できるでしょうか?また、学校の部活動で行われるスポーツは幅広く、それらをどれだけカバーできるでしょうか?  

教員免許を取得し、学校の組織に入っていくことは「アリ」だと思います。が、部活のために、というのは受け入れられなくなってきています。当然、授業準備や校務分掌なども行いながら、なので、専門家故にどれもおろそかにできず、新たな労働災害を引き起こす可能性があるのではと危惧します。

【特別支援教育】  
ここでは、リハビリテーション医学における理学療法学の立場から「教育的理学療法支援モデル」として、「障害のある児童・生徒を対象として、自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援する視点に立ち、児童・生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服することを目的とし、その方法はリハビリテーション医学の知識に基づきその技術を応用し、適切な指導および必要な支援を行う」としている。

【支援の方法】
①外部専門家として:医療支援モデルとして訪問リハ事業所等外部から支援する。
②内部専門家として:内部専門家として教育現場に所属する。
③内部専門家として:教員免許をもち、教育職員として教育支援モデルとして支援する。

【教員免許取得の方法】
ここでは、自立活動の免許状を認定試験でとる方法と、理学療法士等国家試験を受験し免許状を取得するとともに他の教員免許状をともに取得しかかわる方法が考えられる、と書かれていました。
【教育職員としての課題】  
理学療法士が教育職員としてその専門性を活かし、教育的観点からライフモデル(生命・生活・人生)を基盤とした支援を学校生活から地域社会に向けて発信していく必要があろう、と示されている。

特別支援教育について、まず特別支援教育の目標を達成するために、学習指導要領が法的根拠をもって存在していることを忘れてはいけません。

そこには授業で何をするか示されており、そのための人員としての教員を目指すならば、複数の子供を同時進行で担当し、多様な教職員集団の中で学級、学年の運営を行う必要があります。  

私見であり、人それぞれであるから一概に言えないものの、私は理学療法士が担任になることは難しいと思っています。なぜなら、OTは環境に働きかけることを重視し、どう協調するか考えますが、PTは科学を重んじ、深く物事を掘り下げる傾向があるため、多様な価値観が入り乱れ、専門性と矛盾した学校経営に馴染めないと思われるからです。ピンポイントでこれ!という答えが出せないことが多いので、理学療法士が教員になることは、深く掘り下げ、正しい答えを導き出す専門性を殺してしまう可能性があると思うのです。  

また、学校の営みはICFで言うところの「活動⇒参加⇒環境」が主です。指導の根拠を語るために「心身の機能・構造」について言及することはあっても、そこへのアプローチにとどまってはいられません。あったとしても、学校生活のなかの、ごくごくわずかです。大半は別の専門性によって成り立っていることを痛感するでしょう。

リハビリテーションの評価(アセスメント)の知識・技能はどこの特別支援学校でも通用すると思います。が、評価してからどこに向かうかがとても重要です。 医学モデルを職員会議などで振りかざすのではなく、子供への支援を行うなかで、留意点として活用したり、限られた場面でうまく活用したりする専門性が求められている、ということをつけ加えたいと思います。

https://magomago1.org/specialeducationart20200204/
前回のブログは「37)特別支援学校で行われる授業 「図画工作・美術」でした。

https://magomago1.org/39tellyouaboutschoolconsultation/
次のブログは、「39)特別支援学校教員への専門家のコンサルテーションについて考える」です。