こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、特別支援学校に来校するリハビリテーション技士への相談にはあがらなかったけれど 結構大事だと思われた「ニーズ」についてお話したいと思います。
【ふりかえり】
先回のお話では、専門家に出すニードには専門家の専門性に配慮したものであったり、 学部や学年、学級運営に大きな影響を及ぼさないような無難なものであったりする、 というお話をしました。
【支援体制を分析する】
リハビリテーション技士の先生に知って欲しいのは、担任の先生の守備範囲です。
では、一つ例を挙げてみますので、一緒に考えていきましょう。 例えば、下の図のように、誰でも見て分かるA~Dの学級編成が行われていたとします。
この図から、いくつか条件をつけていきます。
①この学年全体が一つの場所に集まる。
②この中の☆の教員が前に出て授業を進めるMT(main teacher)になる。
この集団について、残された4人の先生(△)はどのような ゾーンディフェンスを敷かなければならないか?
A~Dそれぞれに在籍する子供の実態によって変わるのですが、
・2人の教員で支援していたA組から教員1人が欠けると 教員1人で3人をカバーしなければならない。
・B~Dもそれぞれ教員は1人なので、個別対応の生徒が担任と一緒に離席すると、 残った子供を誰が支援するか?という課題があがってきます予見されます。
☆妥協も含めて暗黙のうちに組みあがった教員のフォーメーションから、 個々の教員の守備範囲と、子供の実態がどのように把握されているかが分かります。
【個別対応をする理由】
教員が個別につくときは、大抵以下のような理由によると思います。
①自傷がある
②他害がある
③個別に指導して学習の補助をする
④教室を飛び出していく
⑤教室の物を壊す
⑥感覚遊びが頻回で、椅子から転げ落ちたりする
⑦転倒
⑧その他
リハ:「この指導体制で、個性的な子供とともに、大変ですね。」
先生:「そうでしょ!?」
「もう、手一杯で大変なの。これ以上何かと言われてもできないの。」
こうなると、1回きりで終わる外部指導員は指導体制のことに踏み込みにくくなります。 そうして、元々提出されていた相談表に書かれてあることに接近しようとするでしょう。
【指導目標を達成するための教員体制を考える】
安全を考えて教員が子供につくことと、子供の実態と指導目標をふまえて子供につくことは 一致しないことがあります。
一つ例を挙げます。
生徒A:
大人について欲しい
自分優位に見て欲しい
正直なこと言うと自分で何できるか分からんから、不安
担任の先生は学級の他の子も気にして、自分が一番やないから不満
⇒教員が自分につくよう注目されるよう、逃げちゃえ、投げちゃえ、叩いちゃえ
これに対して、安全重視で集団をまとめるためにとった手段は
「とにかく、できるだけ個別対応作戦」
安全確保、学級経営を重視しましたが、生徒Aは教員体制の穴ができる たびに、遊出や友達の荷物を投げるなど、教員を呼ぶために、教員が困るであろうことを 選んですることを強化していきました。
【改善案】
・良いことは認める。
・よくないことは刺激として強化しないため「教育的無視」
・暇になると大人を呼びたくなるので、一人課題の設定
・手荷物の自己管理
・逸脱し続けていると、やりたい集団活動での課題(シール貼りなど)が友だちに奪われる。
これだけです。 遊出が減り、自分の課題箱から教材を取り出し、自分で取り組む姿が多く見られるようになりました。
【まとめ】
子供の障害の重度化、多様化に加え、教育的ニーズの多様化、個に応じた指導、 これらをクリアするために、限られた人数で安全に留意しながら下校するまで 緊張し続けている教員の現状があります。
それを少しでも軽減するには、環境も含めた教室の実態を把握すること、 妥当性のある目標設定、具体的な対応が重要だと思います。
ピンポイントの支援では、担任とのラポート形成も含め、学年や学級経営まで踏み込みにくいと思います。
1人では難しいですが、まずはいい案が外側からではなく、内側から提案されるような地盤がもっとできたらと思っています。
https://magomago1.org/schoolstaffroom20200129/
前回のブログは「23)特別支援学校の職員室の中はどうなっているか」でした。
https://magomago1.org/firststepformakinglessons/
次のブログは、「26)特別支援学校の授業づくり(初任の先生向け)」です。25は欠番です。すみません。