エリン・メイヤー(2016)は著書「異文化理解力」のなかで
ハイコンテクストについて、「良いコミュニケーションとは繊細で、含みがあり、多層的なものである。メッセージは行間で伝え、行間で受け取る。ほのめかして伝えられることが多く、はっきりと口にすることは少ない。」といっており、その代表として日本、韓国、インドネシア、中国などを挙げています。
また、自分よりハイコンテクストな文化出身の人々と働く際の戦略について、「彼らはいつも発言の裏にあるものを読みとろうともする」として、「何を言っているかではなく何を意味しているか聞くように心がけることだ。つまり相手の発言を吟味して、明確になるような質問をして、相手のボディランゲージをより敏感に察知するよう心がけることだ」、「もっと話を聞いて、こちらの口数を減らして、理解できたか怪しいと思ったときに確認の質問をする。」と説明しています。
【特別支援学校の先生にありがちなこと】
組織人として、担任として、教育者として…様々な顔をもつことを自覚している先生はハイコンテクストになりがちで、本音やストレートな言い回しを避けます。
例えばA君について相談しているとして
①A君以外の児童生徒で、手厚い支援を必要としている児童生徒がいる。
②予算がおりないので、簡単に物品を調達できない。
③保護者の意見が強く、学校としてどうしたいか、なかなか言えない。
④前任者または現上司の意見と違うので、忖度して方向性が変えられない。
⑤多忙感があり、それだけの時間や労力をA君だけのために割けない。
など、A君以外の要因で様々な制約がかかっていたとしても、それを相談の場に出すことはなく、
まず「今ある状況のなかでできることを探している」ことが多いです。
そのため、教員またはA君を支援しようとする人が、有効な手だてを提案したとしても①~⑤などの制約とのバランスを考えて、理由も言わずにNoということがあります。
【こどものためとはいえ】
いくらA君のためとはいえ、組織におえる自分の立場を脅かしたり、過剰な支援になることで学級における支援が偏重することを担任の先生は嫌がります。(A君の支援により学級全体が良くなると分かれば話は別)
そのため、エリン・メイヤー(2016)が述べたように、担任の先生の感情や教育観をもっと話すように促し、よりうまく支援できる方法は何か、支援を難しくしている要因は何なのか、探ることが必要です。
そうして、たとえ有効な支援に到達できなくても、担任の先生は自分の教育観や指導について理解や共感が得られたとして満たされたり、客観的な目線で自分の指導について考え直す機会が得られると考えられます。
もし、指導を難しくしている要因が明らかになってきたら、その阻害因子は取り除けるか、働きやすくする方法はないのか、一緒に考えます。戦略があれば協力し、なければすみやかに撤退してサポートにまわることが必要です。それが「言いっぱなし・やりっぱなしの専門家」ではなく、「協力的な支援者としての専門家」になるためのコツだと思われます。
https://magomago1.org/324specialeducationschoolteachersstyle202101/
前回は「324)特別支援学校教員のコミュニケーションスタイル」でした。
https://magomago1.org/326tooclearleadersometimespreventothermind202101/
次回は「326)ローコンテクストな教員がリーダーとして仕事をするとき、留意すべきこと」です。