学校の文化 担任の先生より

61)特別支援学校(知的)でやっていた着替えの指導(実例)

こんにちは、雑賀孫市です。
今日は、特別支援学校(知的)でやっていた着替えの指導を通して、担任の先生ができることについて書いてみます。

事例:着替えをしたがらない生徒
【はじめ】
・なかなかカバンの荷物の整理をせず、促しても拒否する。
・気分がのってきたら着替えるが、前後、裏表が逆になることが多い。
・着方が違うことを指摘されていると分かると、怒って着替え拒否。
・よく着替え袋や衣服を床に投げる。
・介助なら間違いないはずだが、着ることに応じる時と、着たがらないときがある。
・着替えの途中で床に寝転んで、何もしたくないアピールをする。
(簡単にまとめているようですが、これだけの情報を揃えるには、日々の様子をよく見ていて、ある程度試行錯誤した人でないと答えられないです。また、一見さんだと見せない生徒の様子がよくでていると思います。)

デザイン…?

【考えたこと】
・着替え動作がまったくできない訳ではない。これまで大人が気分を盛り上げたり、神の手(自分でできたねと褒めながら、実は手伝っている)がでたりしていたので、どこまで生徒ができて、何でつまずいているか分からない。
・自分でやる時と、やらない時の違いは何か。
・なかなか着替えにとりかからないのはなぜか。

【確かめるためにやってみた】
・着替えの手順を頭の中で整理し、一つひとつ声をかけながら生徒の様子がどこで変わるか見ました。ストップしたり、怒り始めたりするのはどの段階か、少しずつ声のかけかたや衣服の提示、指さしで示すポイントやタイミングなどを変えて評価しました。
・自分でとりかからない時、何に気を取られるのか、周囲の友達が何をしているときか、などの環境面に注目するようにしました。

【分かったこと】
・どうやら、気が散りやすいのは中途半端に生徒に介入しようとしたときで、同級生の支援に入ってしまうと、言葉かけだけで自分から荷物整理、着替えにうつることが多い。
・どうやら表裏、前後の区別がつかないこと、頑張って着ても間違いを指摘されるかも、という不安がありそうだ。
・前日によく眠れないときに着替えを渋る傾向がありそうだ。
・ゴワゴワした感覚がある、ラガーシャツを嫌がっているようだ(よく持ってきていた)。

【やってみたこと】
・担任(私)は他の生徒の指導に重点的に入ることで距離をとりました。構ってさんモードを誘発せず、自分のペースで着替える環境を保証しました。
・裏表、前後の間違いがネックなので、上着は両手を入れるところ、ズボンは両足に入れるところだけ 「お願いします(ジェスチャー)」のお願いがあったら、そこだけ助ける。手や足を通したら、すぐ離れる。
・感覚に不快感があるのではと思ったので、ラガーシャツを使わず、すべすべした素材の服に変更してもらいました。

【結果】
もともと注意転動の傾向があるので、脱線することはありますが、上着は手を通すところだけ、ズボンは両足を入れるところだけ支援する、というパターンができ、自分で着替えるようになりました。
集団で行動するので、ボイコットする生徒に時間をかけたり、待ち続けたりすることはできません。
そのため、まずは衣服の前後の把握より、停滞せずに、その時に為すべきことをきちんとする、が目標となりました。
ここまでで、約2か月です。課題の明確化から、仮説をたて、急な環境の変化を避けて少しずつ評価と指導の一体化を図りながら、今の状況までもってきました。

これなら、着られるよ

【あとがき】
日々の評価がすごく大事で、「これならどうだろう、これならどうだろう」の繰り返しで問題点を明らかにしていきました。それがないと、泥沼の迷路に入る可能性があったと思います。
これなら、他の人が指導に入ったとしても「上着をきるときに両手を入れるところは手伝ってください。」、「ズボンをはく時は両足を入れるところだけ手伝ってください。」という引継ぎだけで、この生徒は普段と変わらない一日のスタートがきれるのです。


・毎日のことなので時間をかけて見られる
・日による違いが比較できる
・評価と指導を一体化させながら情報が集められる
・仮説が次々出せる


これが担任の先生の強みです。

https://magomago1.org/realneedsspecialeducation202003/
前回のブログは、「60)特別支援にかかわる作業療法士の役割は、学校生活のデザインを支援すること」でした。

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次は、「62)通信教員免許課程の方必見!教育実習はいつ申し込むか」です。